■作者が称賛し逆輸入された『ドラゴンボール』バーダック

 世界初の専門店である『DRAGON BALL STORE TOKYO』が、2025年11月14日にオープンする『ドラゴンボール』。1984年に鳥山明さんが生み出した本作は、世界中に熱狂的なファンを持ち、2022年の映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は全世界で138億円もの興行収入を記録するなど、その人気は衰えを知らない。

 そんな『ドラゴンボール』ファンたちに「主人公・孫悟空の父親は誰?」と質問したら、すぐに「バーダック」という答えが返ってくるだろう。本作に関するさまざまなコンテンツに触れるにつれ、無自覚なまま、ファンたちはバーダックの存在を覚えている。

 しかしこのバーダック、実は原作コミックにはほとんど登場しておらず、実はアニメオリジナルキャラで生まれた存在であることは、意外と知られていないかもしれない。

 バーダックが初めて登場したのは、1990年に放送されたテレビスペシャル『ドラゴンボールZ たったひとりの最終決戦〜フリーザに挑んだZ戦士 孫悟空の父〜』にて。惑星ベジータを破壊しようとするフリーザに、たったひとりで立ち向かったサイヤ人・バーダックの生きざまを描いた本作は、視聴者に鮮烈な印象を与えた。

 原作ファンからも人気を博した本作だが、実は、原作者の鳥山さんはこの脚本にはかかわっていなかったという。しかし鳥山さん自身、この作品を劇場版・テレビスペシャルの中で“一番好きな作品”と『テレビアニメ完全ガイド「Dragonball Z」孫悟空伝説』で語っており、後に原作漫画にバーダックを描き込み、“公式のキャラクター”として歴史に刻んだ。

 アニメから逆輸入された、まさに伝説的なアニメオリジナルキャラクターだと言えるだろう。

 

 「アニメオリジナル」という言葉は、原作ファンはもちろん、アニメファンからもつい嫌厭されがちな言葉だ。しかし、今回紹介した事例のように、アニメオリジナル描写は、時に原作の魅力を増幅させ、さらには原作者に影響を与えることさえある。

 アニメの長い歴史の中には、ファンに愛され、語り継がれてきた素晴らしいオリジナル描写もたくさん存在する。「秀逸なアニメオリジナル」と聞いて、あなたはどの作品を思い浮かべるだろうか。

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