『葬送のフリーレン』舞踏会シーンに『ドラゴンボール』バーダックの存在も…原作ファンも賞賛! アニメ史に残る「秀逸だったアニメオリジナル描写」の画像
『ドラゴンボールZ』 History Box vol.6「バーダック」(バンプレスト)(C)バードスタジオ/集英社・東映アニメーション ©BANDAI SPIRITS CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED

 「アニメオリジナル」という言葉に対し、条件反射でネガティブな印象を抱く原作ファンは少なくないだろう。正直に言うと、筆者もその1人である。

 しかし、漫画や小説をアニメ化するにあたって、映像と音声が伴うアニメだからこそ可能となる表現や描写が存在するのもまた事実である。

 そこで今回は、原作ファンからも高く称賛され、物語に深みを与えた秀逸なアニメオリジナルの描写を3つ振り返っていこう。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■わずかなコマを見事に映像化した『葬送のフリーレン』舞踏会

 2023年に放送が開始されたアニメ『葬送のフリーレン』は、国内のみならず海外でも絶大な人気を誇る作品だ。「第9回クランチロール・アニメアワード2025」では最優秀ドラマ作品賞、最優秀背景美術賞、最優秀監督賞と3部門で最優秀受賞の快挙を成し遂げた。

 『葬送のフリーレン』がこれほどまでに大きな反響を呼んだ理由の1つに、アニメーションの素晴らしさが挙げられる。特に、第15話に放送された舞踏会のシーンは「神作画」と称され、フェルンとシュタルクが優雅に踊る姿はネット上でも大きな話題となった。

 しかし、実はあのダンスシーンは、アニメオリジナルの描写であることはご存じだろうか。

 原作漫画において、この舞踏会でのフェルンとシュタルクはほとんど描写されておらず、さらにダンスシーンについてはほんの数コマしか描かれていない。しかしアニメでは1分以上にわたって、ダンスをする2人の様子が丁寧に映されている。

 ダンス中、ステップを踏む2人が見せる細やかな表情や仕草からは、彼らの関係や心境の変化が手に取るように伝わってきて、アニメオリジナルで追加された要素だとは微塵も感じられない。

 原作を見事に読み解き、映像として消化させた、原作ファンも思わずニッコリしてしまう理想的なアニメオリジナル要素だったのではないだろうか。

■「流体金属」という良発想が語り継がれる『銀河英雄伝説』イゼルローン要塞

 壮大なスケールで銀河帝国と自由惑星同盟の闘いを描いたスペースオペラ『銀河英雄伝説』。

 1982年から刊行が開始された小説を原作とし、1988年からはOVA版が、そして、2018年には『銀河英雄伝説 Die Neue These』(以降、DNT版)として再アニメ化され、世代を超えてファンを魅了し続けている。

 この『銀河英雄伝説』には、「イゼルローン要塞」という人工天体が登場する。自由惑星同盟の天才提督、ヤン・ウェンリーの名を一気に知らしめるきっかけとなった軍事要塞だ。

 宇宙広しと言えど、銀河帝国と自由惑星同盟が行軍に利用できるルートはたった1つしかない。そのルートを支配できさえすれば、自分たちの領地に攻め入られる心配はない。この回廊に立っているのが、このイゼルローン要塞だった。

 イゼルローン要塞は「雷神の槌(トゥールハンマー)」と呼ばれる凶悪な主砲を備えており、その1撃は数百の軍艦を消滅させるほど強力。さらに要塞の表面はあらゆる攻撃を和らげる「流体金属」に覆われている。

 凶悪な軍事要塞であるにもかかわらず、流体金属に覆われた見た目は非常に美しい。液体のように輝き、不気味にうねるこの流体金属のビジュアルが印象に残っているアニメファンも多いのではないだろうか。

 だが、この流体金属という設定、アニメではOVA版・DNT版ともに登場するが、実は原作小説には登場しておらず、アニメオリジナルの要素として加えられたものだという。

 小説が原作の『銀河英雄伝説』をアニメ化するにあたり、文字だけでは伝わりにくい絶望的なまでの堅牢さを視覚的に表現する、見事なアイデアだったと言えるだろう。物語においても極めて重要なイゼルローン要塞の特別感が際立つ、秀逸なオリジナル描写だと感じる。

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