■魅力的な女子たちが繰り広げる甘酸っぱい恋愛模様

 大勢の個性豊かなキャラクターの中には、女性キャラも多い。物語のヒロインは「河川唯(かわ ゆい)」だが、スケ番グループ「御女組(おめぐみ)」のリーダー「天野邪子(あまの じゃこ)」の人気が高く、主人公の一堂零との絡みも多かったためか女性読者からも支持を集めた。

 その名のとおり「あまのじゃく」な彼女は、ふだんの言動から面倒な性格と思われがちだが、実は「逆」の言葉に従ってしまう素直で扱いやすい女の子。ときおり見せるギャップも可愛く、邪子がスケ番となり「御女組」を作った真相を知れば、彼女に対する印象はガラリと変わる。

 また、作中での恋愛模様からも目が離せない。ヒロインの唯は、零に対して一途で無邪気な好意を示すが、女生徒から人気の翔や塊からのアピールには気づかない。

 一方、零のほうも女子から好意を寄せられる場面もあるが、誰に対しても実直な態度でブレないため、読者からは「性格がイケメン」といわれていた。

 ほかにも「奇面組」のメンバーである冷越豪(れいえつ ごう)と、唯の親友・宇留千絵(うる ちえ)は、いがみ合いながらも仲が良い。その近すぎる距離感や、お互いのテレ隠しが甘酸っぱく、多くのファンをヤキモキさせた。

■魅力ある楽曲、時代を映すパロディや表現はどうなる?

 昭和版アニメの楽曲は、当時絶大な人気を博したアイドルグループ「おニャン子クラブ」のユニット「うしろゆびさされ組」や「うしろ髪ひかれ隊」などが担当。アニメ放映2年間でOPテーマ曲は7回、ED曲は8回も変わり、そのほとんどを「おニャン子」のプロデューサー・秋元康さんが作詞を務めた。

 今回公開された新アニメのイメージMVでも、旧アニメの主題歌『うしろゆびさされ組』を声優の白石晴香さん(河川唯役)と長谷川育美さん(宇留千絵役)がカバーし、往年のファンを喜ばせている。新アニメの主題歌がどのような曲になるのかも楽しみだ。

 旧アニメ版では昭和を代表するアイドルグループが主題歌を務めたが、新アニメでは当時の時代を映す「パロディ」の行方にも注目が集まる。たとえば「似蛭田妖(にひるだ よう)」のようなダジャレから命名されたキャラは理解しやすいが、今のアニメファンが「爺面七重吾(じいめん ななじゅうご)」の名前が昭和の刑事ドラマ『Gメン’75』のパロディだと気づくのは困難だろう。

 ほかにも他作品である『ズウ~青春動物園~』(小学館)の登場人物のパロディや、『ウルトラマン』のパロディ「ワラトルマン」の扱いなども気になる。

 また「奇面組」のメンバーは何度も留年して実年齢は高いが、豪は酒屋の息子で酒乱、出瀬潔(しゅっせ きよし)のセクハラ、スケ番の邪子の喫煙シーンなども、現代のコンプラでは厳しそうだ。昭和時代の少年漫画では、未成年の喫煙や飲酒シーンは「不良」を象徴する表現として当たり前に使われていたのだ。

 2024年放送のドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)でも話題になったが、時代の違いによるギャップは確実に存在する。当時とは許容度が異なるため、多少の変更は避けられないのかもしれない。


 「奇面組」メンバーたちは、自分たちの容姿や変態性を「個性」だと前向きにとらえているが、それはリーダー・一堂零からの「受け売り」だった。彼と出会う前の4人は、周囲にからかわれ、目立たないように生きていた。

 現代においても、零の「人間とはひとりひとり、別の個性を持って生まれてきたもの」「それを隠すのは不自然」といった言葉に救われる人はいるだろう。多様性が重視される今こそ、「世の中の歯車となるより、世の中を味つけする調味料になろう」という「奇面組」の精神が求められるのかもしれない。

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