■エドとアルの母親がホムンクルスに?
エドとその弟・アルフォンス(アル)の母親であるトリシャにも、旧アニメのオリジナル要素が加えられている。トリシャといえば、物語が始まるきっかけとなる人物だ。
愛する母親を病気で亡くしたエドとアルは、人体錬成で彼女を生き返らせようとして失敗。その結果、エドは右腕と左脚を失い、アルは肉体を失ってしまう。2人がトリシャを生き返らせようとしなければ、ストーリーは始まらなかった。
その出だしは原作と同じだが、その後のトリシャの扱いは大きく異なる。旧アニメの彼女は、ホムンクルスとして再登場するのだ。そうなった理由は、ホムンクルスがどのように誕生したかという設定の違いにある。
原作ではホムンクルスは黒幕である「お父様」から生まれている。一方、旧アニメでは、人体錬成に失敗した時にできた肉塊に賢者の石を与えて生まれたもの、という設定になっていた。
こうしてトリシャはホムンクルスとしてよみがえったように見えたが、それは外見だけで、中身はまったくの別物である。「人間になりたい」という一心でエドたちを殺しにかかり、自分を母親のように慕っていたホムンクルスのラースを道具のように扱う。
最後はエドによって体の成分を揮発性の高いエタノールに再構築され、蒸発して死んでしまった。
トリシャに関しては他にも原作との違いがある。それが病に侵されて世を去るまでの流れだ。原作ではエドやアルを優しく見守りつつ、静かに息を引き取ったイメージが強い。しかし、旧アニメでは夫がいなくなったショックによって、病気にかかったことを知りながらも放置して自暴自棄になっていた。
回想で登場する“優しいお母さん”というだけでなく、歪んだホムンクルスとして再登場を果たしたトリシャは、視聴者に強烈なインパクトを与えた。
このように旧アニメは原作や新アニメに比べるとかなりダークな印象だ。しかし、まったく別物の『鋼の錬金術師』として割り切れば、原作とはまた違ったドラマを生み出したといえるのではないだろうか。


