昭和の『週刊少年ジャンプ』を語るうえで欠かせない存在が、車田正美氏によるボクシング漫画『リングにかけろ』である。1977年から1981年にかけて連載され、“リンかけ”の愛称で親しまれた本作は、後に『聖闘士星矢』で世界的な人気を獲得する車田氏の出世作だ。
必殺技が飛び交うド派手な戦い、個性豊かなキャラクターたちのアツい友情……さまざまな魅力にあふれた本作は、多くのファンを魅了してきた。本記事では、そんな『リングにかけろ』が迎えたラストと、登場人物たちの「その後」についてあらためて振り返っていこう。
※本記事には『リングにかけろ』の核心部分の内容も含みます。
■多くの読者の心に残る感動の最終回
『リングにかけろ』は連載開始当初、気弱な少年の高嶺竜児が、プロボクサーだった亡き父の遺志を継いで世界チャンピオンを目指すべく、姉の菊の教えを受けて成長していくスポ根漫画だった。試合の内容も現実的なものだったが、途中から路線を変更。実際のボクシングとはかけ離れたフィニッシュブローを持ったボクサー同士が、超人的な戦いを繰り広げる作風へと変貌した。
しかし、これが功を奏して人気が大爆発。竜児、剣崎順、香取石松、志那虎一城、河井武士の「黄金の日本Jr.」が世界の強豪と死闘を繰り広げ、それぞれの必殺パンチ「ブーメランフック」「ギャラクティカマグナム」「ハリケーンボルト」「スペシャルローリングサンダー」「ジェットアッパー」は、独創的かつ圧倒的な破壊力を誇った。連載当時は技名を叫んで真似する少年が後を絶たなかったほどだ。
最終回が“巻頭カラー”で飾られたことからも、その人気のすさまじさがうかがえる。ジャンプ史上、巻頭カラーで最終回を迎えたのは、本作の他に『ドラゴンボール』『SLAM DUNK』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』しかない。
物語は全国大会を経て世界大会へと展開され、強豪フランス、ドイツを撃破し、決勝では「神々の国」ギリシア代表と対戦。血を流し倒れながらも立ち上がる5人は、文字通り命を賭けた戦いを繰り広げ、全員無敗で世界大会を制覇した。
そして「ギリシア十二神編」「阿修羅編」を経て、剣崎はプロボクサーになり、やがて世界王者に。クライマックスでは同じくプロ入りした竜児との世界タイトルマッチ編へと突入する。
試合前、剣崎と竜児はこれまでの激闘により満身創痍の状態であることが判明。どちらも、いつ命を落とすか分からない状況の中で始まったタイトルマッチは、互いに必殺ブローが飛び交う壮絶なものとなった。
そして第5ラウンド、竜児の新技「ウイニング・ザ・レインボー」と剣崎最大の必殺ブロー「ギャラクティカ・ファントム」が衝突。「銀河が泣いた! 虹が砕けた!!」という“伝説の煽り”とともにダブルノックダウンとなる。
テンカウントすれすれで立ち上がった竜児が勝利し、新チャンピオンとなった瞬間、剣崎は彼の手を取り「おめえが世界チャンピオンだ!!」と高く掲げた。その後、2人はボロボロのまま丘の上の教会で待つ菊のもとに姿を現し、安らかな表情を浮かべる。
後から駆け付けた石松らに対し、神父は「あの3人の生命はあざやかに昇華したのだ…」と語る。チャンピオンベルトを竜児の腰に置く剣崎と、それを見守る菊。こうして『リングにかけろ』は完結を迎えた。


