■『バイオハザード ヴィレッジ』プレイヤーを惑わした“村の預言者”
『バイオハザード ヴィレッジ』では、村の至るところに現れる奇妙な老婆がプレイヤーを震え上がらせた。杖をつき、「やつらが来るぞ!」と予言めいた言葉を残して不気味に笑いながら去っていく姿は、味方とも敵ともつかない存在であった。
村の人間からは「とても献身的」という評価だが、クリーチャーの徘徊する村で1人外にいながら無傷の老婆の得体の知れなさは、沸々と恐怖を湧き上がらせる。
後にその正体は、物語の黒幕であるマザー・ミランダだったことが判明する。プレイヤーを油断させ、時に導きながら計画を進める彼女の演出は、単なる敵役を超えた深みを持っていた。ラストで正体が明かされるまで「ただのおかしな老婆」と信じていたプレイヤーも多かったため、そのギャップは大きな驚きを生んだ。
一方、 “ジジイ枠”として忘れてはならないのが、再び『バイオハザード7』より、ベイカー家の一員ジョー・ベイカーである。もっとも彼は敵役というわけではない。追加エピソード『END of ZOE』の主人公で、本編でイーサンを助けてくれたゾイ・ベイカーの叔父にあたる存在だ。
見た目は田舎に暮らす老人だが、その肉体は異常なまでに鍛え上げられており、武器を持たず素手でクリーチャーを殴り倒していく豪快さが特徴だ。本編では銃火器でさえ苦戦するクリーチャーを、パンチだけで粉砕する姿は恐怖を超えて痛快ですらある。
なぜかクリーチャー側もパンチで応戦して来るうえ、そんな相手にパワーボムを繰り出すジョーのパワフルさには、思わず吹き出してしまう。傷ついても木の皮をめくって見つけた芋虫やムカデを食べて回復する姿からは、ジル・バレンタインやクリス・レッドフィールドとは違ったサバイバル能力の高さが垣間見える。
ちなみに、『バイオハザード7』はVRでもプレイできる。その場合、虫を食べるシーンはちょうどプレイヤーの口あたりで描写されるため、本当に虫を食べさせられているように思えてくる。回復するためには、そんな恐怖も乗り越える覚悟が必要だ。
『バイオハザード』シリーズはゾンビや怪物だけでなく、「老い」を恐怖に転化させる演出でもプレイヤーを魅了してきた。『レクイエム』のトレーラーで姿を見せた巨大な老婆の怪物も、こうした系譜に連なる存在といえるだろう。
エヴリンの静かな不気味さ、マーガレットの異様さ、マザー・ミランダの正体を隠した演出、ジョーのたくましさ。ここで紹介した4人は、それぞれが違う形でプレイヤーの記憶に焼き付いている。今後のシリーズでも「怖い老人キャラ」がどのような進化を遂げるのか、注目せずにはいられない。


