■巨悪を打ち砕く渾身の一打…『ワンパンマン』サイタマ
『ワンパンマン』は、ONEさんが手掛けるウェブ漫画を原作とし、村田雄介さんが作画を担当するリメイク版がウェブコミック配信サイト『となりのヤングジャンプ』(集英社)で連載されている人気作品だ。
本作は、ヒーローたちが平和を守るため日夜奮闘する世界を舞台に、あまりにも強すぎる力を持った主人公・サイタマの活躍を、熱く、時にコミカルに描いたバトル漫画である。
サイタマはその強さゆえに相手を一撃(ワンパン)で撃破してしまうため、作中のほとんどの戦闘が一度のパンチで終わる。
そんななか、読者のフラストレーションをこれでもかと吹き飛ばした珠玉の瞬殺シーンといえば、災害レベル「鬼」の怪人・深海王とのワンシーンだろう。
魚人のような見た目をした深海王は、A級ヒーローの2人組を難なく撃破し、駆け付けたS級ヒーローすらもパワー、スピードで圧倒。さらに、雨を浴びることで本来の姿と実力を解放するなど、まさに災害級の力で街を蹂躙していった。
並みいるヒーローたちを退け、人々が逃げこんだ避難用シェルターへ迫る深海王。そこに立ちはだかったのが、C級ヒーローの無免ライダーだった。
実力不足ゆえ、ひたすら叩きのめされる無免ライダーだったが、彼は傷を負おうとも決して諦めず、民間人の声援を受けながら戦い続ける。
だが、決定的な一打を見舞われ、万事休す……と思われたその瞬間、ここでついに「ワンパンマン」ことサイタマが駆け付ける。
無免ライダーの奮闘を讃えたサイタマは深海王の一撃を生身で受け止めると、いつも通りたった一撃で胴体に風穴を空ける。降りしきっていた雨すら吹き飛ばすほどの強烈な一撃に、避難していた民間人たちはたまらず声を上げた。
無免ライダーのヒーローとしての志に心を震わされるだけでなく、彼を苦しめた巨悪が一撃粉砕される爽快感。本作の魅力がこれでもかと凝縮されたワンシーンである。
バトル漫画において、対戦相手をたった一撃で打ち倒してしまう展開は、読者に最高のカタルシスをもたらしてくれる。
特に、これまで大暴れしていた強キャラがすぐ撃破される展開は、登場した新キャラクターの圧倒的な実力を披露する場面としても、絶大なインパクトを残す。
一撃というまさに一瞬に秘められたロマンは、今も昔も読者の心を強く掴んで離さない魅力を持っているのである。