
1984年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載が始まった、鳥山明さんの描いたバトル漫画『ドラゴンボール』において、主人公・孫悟空らが苦戦した強敵・フリーザが、未来からやってきたトランクスにあっけなく倒されるシーンは、多くの読者に衝撃を与えた。
バトル漫画の魅力は、手に汗握る激闘だけではない。圧倒的な力量差で相手を一瞬にして倒してしまう展開も大きな見どころの一つである。
これまで猛威を振るっていた強敵や、味方を苦しめた実力者が一撃のもとに崩れ去る姿は爽快で、いつも読者の度肝を抜いてくれる。
そこで、ロマン溢れるバトル漫画で一瞬で敵を倒したシーンを振り返っていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■中国拳法の神髄がここに…『グラップラー刃牙』烈海王
1991年に『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で連載が開始され、今もなお新たな戦いの物語が描かれ続けている板垣恵介さんの大人気格闘漫画『グラップラー刃牙』。地下闘技場のチャンピオンである高校生・範馬刃牙が、個性的なファイターたちと死闘を繰り広げる物語だ。
なかでも終盤で開催された「最大トーナメント編」では、これまで登場したキャラクターを含めた32名ものキャラクターが一堂に会し、数々の名勝負で読者を圧倒した。
このトーナメントのなかで、特に印象的な試合を見せたキャラクターといえば、中国拳法の使い手・烈海王だろう。
3回戦にて烈が対峙したのは、“空手界の最終兵器(リーサルウェポン)”と評される実力者・愚地克巳。だが、この試合は読者も予想だにしなかった意外な展開を迎えることとなる。
克巳は“武神”と称される父・愚地独歩にも勝るとも劣らないポテンシャルを秘めた天才空手家で、2回戦では音速を超える必殺技「マッハ突き」を披露。その実力を遺憾なく見せつけていた。
自身の勝利を疑わず、試合開始直後から「マッハ突き」の構えに転じる克己。観客と試合参加者たちが見守るなか、烈はまさかの方法でこの奥義を破る。
なんと烈は空気を圧縮して吹き出し、即席の目潰しとして利用。それにより生まれた一瞬の隙で距離を詰め、一手早く拳の突きを叩き込み、克己を沈めてしまったのだ。
想像をはるかに超えた烈の実力に、刃牙や大会参加者たちは騒然となる。烈は克己の実力を賞賛しつつ、そのうえで「キサマ等の居る場所は既に——我々が2000年前に通過した場所だッッッ」と真っ向から言い放ち、中国拳法の歴史を見せつけた。
ほかの追随を許さない実力もさることながら、烈海王というキャラクターが持つ己の武に対する自信や覚悟。彼の誠実かつ荒々しい気性が見事に表現された名シーンである。
■窮地を救う、水柱の実力…『鬼滅の刃』冨岡義勇
今年、劇場版アニメ『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が公開され、日本歴代興行収入1位を記録するなど、社会現象を巻き起こした吾峠呼世晴さんの大人気作品『鬼滅の刃』。原作漫画の連載が完結してもなお、いまだ冷めやらぬ凄まじい盛り上がりを見せ続けている。
本作では、人を喰う鬼たちと戦う「鬼殺隊」を中心とした物語だ。そのなかでも圧倒的な実力で敵を瞬殺し、仲間のピンチを救ったのが、鬼殺隊最高位の剣士「柱」の一人、水柱・冨岡義勇である。
義勇の実力が存分に描かれたのが、主人公・竈門炭治郎らがピンチに陥った「那田蜘蛛山編」での一幕。
那田蜘蛛山を根城とする鬼の一家の討伐に向かった炭治郎たちだったが、鬼たちの圧倒的な戦闘力に追い詰められてしまう。
その窮地に現れた義勇は、まず仲間の嘴平伊之助のもとに駆け付け、強敵・父蜘蛛を一太刀で撃破。続いて炭治郎と対峙していた十二鬼月の一人・累の前に立ちはだかる。
誰もが激戦を予感したが、義勇は累の放つ攻撃を独自に編み出した水の呼吸 拾壱ノ型「凪」で完封。たった一振りで累の頸を跳ね、難なく勝利してしまうのだった。
これまで謎に包まれていた義勇の実力が初めて披露されるこの場面。颯爽と駆け付け、強敵を汗一つかかずに容易く倒す姿はまさに圧巻だった。
炭治郎がさんざん苦しめられた強敵・累が一撃のもとに斬り捨てられる強烈なカタルシスと、柱としての義勇の頼もしさを存分に感じ取れる名エピソードといえるだろう。