落ち着いた恋愛ならではの良さも描かれていた!矢沢あい作品の「大人カップル」『NANA』京助&淳子に『天使なんかじゃない』将志&博子も…の画像
コンプリートDVD-BOX『NANA-ナナ-』第1巻(バップ)(C)矢沢漫画制作所/集英社・VAP・マッドハウス・NTV

 人気漫画家・矢沢あい氏の作品は、登場人物たちが織りなすドラマチックな恋愛模様で多くのファンを魅了してきた。

 物語の中心にいる主人公カップルの情熱的な恋に心を奪われがちだが、歳を重ねてあらためて作品を振り返ると、主人公カップルよりも“少し大人”のカップルが持つ、穏やかで深い愛情の魅力が分かってくるから不思議だ。

 そこで今回は、大人になったからこそ良さが分かる、矢沢作品の「大人カップル」たちをご紹介しよう。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■熟年夫婦のような安定感『NANAーナナー』高倉京助&早乙女淳子

 2000年から『Cookie』(集英社)で連載が開始された『NANAーナナー』は、主人公の大崎ナナと小松奈々が恋や友情、夢を追い求める目まぐるしい日常を描いた物語。2009年より矢沢氏の体調不良により長期休載となっているが、再開を望む声が絶えない作品である。

 主人公の1人・ナナと、その恋人・本城蓮のカップルは、まるで運命で結ばれているかのような関係性で読者は憧れたものだ。しかし、大人になって振り返ってみると、奈々の友人・早乙女淳子と高倉京助のカップルの魅力が心に沁みる。

 淳子と京助は美術系の専門学校で出会っている。もともと淳子と知り合いだった遠藤章司と京助が高校時代の友人であり、校内で偶然再会したことがきっかけだった。

 奈々も含めた4人で飲み会をした翌朝、京助と淳子は男女の関係になっていた。「一晩じっくり話してみたら意気投合した」「魔がさした」などと言い訳を並べる淳子に対し、「おれは淳子の事 一目見た時からいいなと思ってたけど」と、ストレートに伝える京助。

 京助の淳子に対する深い愛情は、作中でたびたび描かれている。奈々と付き合っているのにもかかわらず、バイト先で出会った川村幸子に惹かれる章司が「モテたら浮気するんだな」と京助に訪ねた際、「しねぇよ」と即答。

 「なんで? 淳子が怖いから?」と章司に問われた京助は、「淳子を失うのが怖いから」と静かに答える。その言葉に痺れたのは筆者だけではないだろう。

 出会ってから恋人になるまで早かった2人だが、それからもその関係性には一切の揺らぎがなく、ずっと変わらぬ落ち着きを保ち続けている。大人になって振り返ると、彼らのように多くを語らずとも互いを理解し合える存在こそ、真の運命の相手なのかもしれないと感じさせられる。

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