アムロ・レイ「空白の5年間」の謎  稀代のニュータイプ『Zガンダム』以降の動向を追うの画像
『機動戦士ガンダム ピューリッツァー -アムロ・レイは極光の彼方へ- 1』(漫画:才谷ウメタロウ氏、脚本:大脇千尋氏/KADOKAWA)書影より

 テレビアニメ『機動戦士ガンダム』の主人公で、一年戦争を皮切りに圧倒的な戦果を挙げていったパイロット「アムロ・レイ」。『ガンダム』のことはよく知らなくても、ライバルのシャア・アズナブルと合わせて、名前だけは知っているという人も多いのではないだろうか。

 アムロは、続編のテレビアニメ『機動戦士Zガンダム』にも登場。新たなニュータイプ「カミーユ・ビダン」を導いてシャアとも共闘するが、宇宙に出ることはなく地球に残って戦い続けた。

 そのグリプス戦役の終結から5年の空白期間を経て、アムロとシャアの決戦が描かれたのが劇場版『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』だ。これがアムロにとって最後の戦いとなった。

 だがアニメに登場しなかった『逆襲のシャア』までの約5年間、アムロはどこで、何をしていたのだろうか。

※本記事には各作品の内容を含みます。

■アニメ映像作品から、彼の足跡をたどる

 劇場版『機動戦士ZガンダムIII A New Translation -星の鼓動は愛-』の中では、アムロがグリプス戦役の終結を地球から見届けているシーンが描かれた。

 その後にあたるテレビアニメ『機動戦士ガンダムZZ』の第35話「落ちてきた空」でのブライト・ノアとハヤト・コバヤシの会話の中では、「そうか、アムロは宇宙(そら)に上がったか」という発言があった。

 厳密にいえば劇場版『Zガンダム』の結末はテレビアニメ版とは異なるため、そのまま『機動戦士ガンダムZZ』の物語には直結しないのだが、アムロの動向としてはこのタイミングで地球を発ち、宇宙に向かったのは間違いないだろう。

 そして宇宙世紀0093年が舞台の『逆襲のシャア』の冒頭、アムロは「この2年間、全部のコロニーを調査したんだぞ」と発言。アムロが所属する地球連邦軍の外郭部隊「ロンド・ベル」の発足が0090年のことなので、ほぼ発足の直後からアムロはブライトに合流し、ロンド・ベルの一員として活動していたことがうかがえる。

  アニメ作品において、『Zガンダム』以降のアムロの足取りが分かる描写はこれだけである。『Zガンダム』で描かれたグリプス戦役の終結から『逆襲のシャア』までの約5年間のうちに、地球にいたアムロは宇宙へと上がり、発足したばかりのロンド・ベルでコロニーを調査していた程度のことしか分かっていない。

■外伝作品に描かれたアムロの動向

 そのアムロの空白の5年間の行動を断片的に描いた外伝作品が存在する。それが虎哉孝征氏の描いたコミック『機動戦士ムーンガンダム』(KADOKAWA)である。

 同作は宇宙世紀0091年が舞台で、ロンド・ベルで活躍するアムロも登場する。主な任務は、ティターンズの残党の掃討やシャアの動向調査であり、ティターンズの残党が開発した「サイコ・ガンダムMk-IV G・ドアーズ」と戦い、アムロがこれを撃破したことが物語を大きく動かす鍵となる。

 劇中でアムロは『Zガンダム』時代の愛機である陸戦用MS「ディジェ」を宇宙用に改修した「リック・ディジェ」や、さらにそのカスタム機「リック・ディジェ改」などに搭乗している。

 これはガンダムやニュータイプの存在を恐れた地球連邦軍が、ガンダムタイプのMSを封印したことを示唆する。そのためアムロは独自に新たなガンダムの設計を開始しており、「名前だけはνガンダムと決めている」と発言していた。

 さらにアムロは、ムーンガンダムやG・ドアーズが持つサイコミュ兵器「サイコプレート」を見て、「あの鰭(フィン)みたいなファンネルは使えそうだな」と発言し、ここでνガンダムの装備の着想を得たかのような描写もあった。

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