■魔王を操る魔王『ドラクエ6』の「デスタムーア」

『ドラゴンクエストVI 幻の大地』で勇者たちの前に立ち塞がるのが魔王「デスタムーア」だ。

 ムドー、ジャミラス、グラコス、デュランという四魔王を配下に従え、現実世界と夢の世界の両方に侵攻していた。

 ムドーは序盤から人々に恐怖を植え付けた存在で、主人公たちの序盤の討伐対象でもある。ジャミラスは「メダル王の城」、グラコスは「カルベローナ」、デュランは「ゼニス城」と、それぞれ重要拠点を封印し、各地で支配の網を広げていた。

 デスタムーア自身は「はざまの世界」を創造し、人々を閉じ込めて絶望させるという卑劣極まりない支配を展開。実際の領土的な征服だけでなく、精神や存在そのものを縛り上げる手法を取っていた点が特徴的だ。

 侵攻度としては、上下二つの世界を大きく掌握した魔王といえるだろう。

■世界のほとんどを征服した魔王『ドラクエ7』の「オルゴ・デミーラ」

 そして『ドラクエ』史上最も世界征服に近づいた魔王とされるのが、今年9月にリメイク版の発売が発表された『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』のラスボス「オルゴ・デミーラ」だ。

 主人公たちが暮らす「エスタード島」を除き、世界の全ての島や大陸を封印することに成功。つまりゲーム開始時点で「世界のほとんどを手中に収めていた」唯一の魔王である。

 さらに過去には神と直接戦い、勝利した経歴を持つ。「万物の王にして天地をたばねる者」と自称するだけの力を備えていた。手下を使って島を一つずつ切り取り、絶望をばらまいた上で世界を闇に飲み込む手口は、冷酷かつ徹底していた。

 結果的に主人公たちに敗れるが、その侵攻度は歴代随一。シリーズ全体を通しても「最も世界征服に近づいた魔王」という称号にふさわしい存在といえる。

 

 『ドラクエ』の魔王たちは、単なる強敵にとどまらず「どこまで世界を征服していたか」という観点で比べると、その個性が際立って見えてくる。アレフガルドを支配したりゅうおう。上下二つの世界を同時に浸食していたゾーマやデスタムーア。そして、ついに「ほぼ全世界」を手中に収めたオルゴ・デミーラ。

 主人公が旅立つ段階で、世界がどれだけ魔王に奪われていたか。そこにシリーズを通じて描かれた「絶望からの反撃」というドラマの核心がある。ドラクエの魔王を「征服の進捗率」で眺め直すと、プレイヤーが戦った試練の重みが一層鮮明になるのである。

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