
『週刊少年サンデー』(小学館)が誇る、満田拓也氏による本格野球漫画『MAJOR』。本作における「最強ピッチャーは誰か」と問われれば、多くの読者が主人公・茂野吾郎の名前を挙げるだろう。160km/hを超える剛速球で多くのバッターをねじ伏せ、メジャーリーグでサイ・ヤング賞を2度も獲得する偉業を成し遂げた吾郎は、間違いなく作中世界で1、2を争う最強ピッチャーだ。
では、「最強バッター」は誰だろうか? 本作に登場した強打者は数知れず。年代も所属チームも違うため、その中で優劣を決めるのはなかなか難しい。メジャーで超一流にまで登り詰めた吾郎と比肩しうる最強ともなれば、はたして何人が候補に挙がり、頂点に輝くだろうか?
今回は、全78巻にわたる『MAJOR』の長い歴史の中から、最強バッターは誰かを考えてみたい。
※本記事には作品の内容を含みます
■「ここぞ!」の場面で絶対に打つ頼れる相棒! 佐藤寿也
『MAJOR』の最強バッターを考える上で絶対に外せないのが、吾郎の相棒・佐藤寿也だ。
吾郎の規格外のストレートを捕球する天才キャッチャーでありながら、バッターとしてもメジャーリーグで本塁打王を獲得する打棒を誇る。現実世界では日本人捕手がメジャーで本塁打王になった例はなく、サイ・ヤング賞を2度獲得した吾郎以上に、現実離れしたハイスぺックぶりのプレイヤーといえるだろう。
寿也はホームランを量産するパンチ力も素晴らしいが、それ以上に評価したいのが、尋常ではない勝負強さだ。作中の描写だけでもサヨナラホームランを5本打っており、満塁の場面での打率も非常に高い。チームメイトや読者が「ここで打ってほしい!」と願う場面では、必ずといって良いほど結果を残す男だ。
特に印象的だったのが、本作のクライマックス「ワールドシリーズ編」での活躍である。メジャーリーガーとなった寿也は、インディアナ・ホーネッツで吾郎のチームメイトとして、テキサス・レイダースと世界一をかけた試合に臨む。
怪我によるブランクを抱えながらも、最終戦でなんと2度の満塁ホームランを打ち、チームを劇的な勝利に導いた。これにはさすがの吾郎も「おめはー世界最強のスラッガーだぜ!!」と感激するばかり。
その類まれな勝負強さは、吾郎が言うように最強といっても過言ではない。
■「メジャーリーグ編」における最大のライバル!ギブソンJr.
寿也が最高の相棒なら、吾郎最大のライバルはジョー・ギブソンJr.(以下、ジュニア)で間違いない。
吾郎と浅からぬ因縁を持つ大投手、ジョー・ギブソンの息子であるジュニアは、左右どちらでも打てるスイッチヒッターでありながら、長打も打てるスラッガーだ。「マイナーリーグ編」では、アメリカに渡ったばかりの吾郎から難なくホームランを放ち、別格の存在感を見せつけた。
ジュニアは吾郎と数々の名勝負をくり広げてきたが、その中でも劇的なのが「W杯編」での日本との決勝戦だ。病を押してマウンドに上がる父・ギブソンと絶好調の吾郎の投げ合いにより、試合は延長16回裏までもつれ込み、ジュニアはノーアウト満塁のチャンスで打席に立つ。
疲労困憊でも100マイル(約161km/h)を投げる吾郎に追い込まれるが、ジュニアは最高のライバルと偉大な父親への想いを込めてバットを振り、この日最速の102マイルの剛速球をスタンドへと放りこむ。試合を決めるサヨナラ満塁ホームランで、吾郎を完璧に打ち砕いたのだ。
W杯後もジュニアはメジャーリーグで活躍し続け、「ワールドシリーズ編」では43年ぶりとなる三冠王を獲得する打者にまで成長。捕手で本塁打王を獲った寿也もすごいが、記録の面ではジュニアが頭一つ抜けていると言えるだろう。