■部下や後輩から慕われる野獣「ヤザン・ゲーブル」
ティターンズでも屈指の優秀なパイロットとして知られるのがヤザン・ゲーブルだ。敵には容赦がなく、荒々しい物言いと戦闘時に見せる野獣のような凶暴さは、相手からすると悪役そのものである。
しかし、部下や後輩からの評価はまったく別物だ。部下に配属されたアドル・ゼノが出撃前に緊張しているのを見て、からかいながらリラックスさせるなど、頼もしい兄貴分としての一面を見せた。
一方、気に入らない上司への反抗や命令無視は当たり前。自分や仲間に仇なす者は上官だろうと平気で牙を剥く。自身の出世のためなら味方の犠牲も厭わない非道なジャマイカンに対し、ヤザンは意図的にエゥーゴの機体を誘導して始末させている。
とにかく戦うのが好きな軍人で、ティターンズの理念や出世にはまったく興味がない。むしろ毒ガス攻撃やコロニー落としのような民間人に対する大量虐殺には否定的だ。おそらく、戦えもしない女や子どもを一方的に攻撃してもおもしろくないというのが、彼の考えなのだろう。
常軌を逸したバトルジャンキーなのは確かだが、少なくとも非道な男ではない。エゥーゴからすると悪役ではあったが、彼は我が強すぎたゆえにティターンズに染まらなかった稀有な男といえるだろう。
さすがにティターンズの「良心」は言い過ぎかもしれないが、彼なりに戦場のルールがあり、そのポリシーに従って行動する筋の通った男だったのは間違いない。
ティターンズといえば、バスクやジャマイカンのようなアクの強い極悪人集団といった印象が強い。しかし「組織」というフィルターを外して個々をあらためて評価してみると、まったく違った印象を受けるキャラクターもいる。非道な行動を繰り返す組織に染まらず、自分の信念に従って抗った男たちがいたことを覚えておきたい。