■巨人を圧倒する達人の一太刀…『るろうに剣心ー明治剣客浪漫譚ー』

 その高い人気から今もなお続編が連載されており、アニメや実写映画など多数のメディア展開を続けている『るろうに剣心ー明治剣客浪漫譚ー』(和月伸宏さん)。

 剣客たちの手に汗握る激闘が魅力の本作だが、なかでも助っ人として駆け付け、その圧倒的な実力を見せつけたのが、主人公・緋村剣心の師匠である比古清十郎だ。

 彼の人間離れした強さが存分に描かれたのが、京都・葵屋での激戦のさなか。剣心の仲間たちが志々雄真実の一派と一進一退の攻防を繰り広げる中、十本刀の一人「破軍(乙)」の不二が登場したことで戦況は一変。規格外の巨体を持つ不二の攻撃によって瞬く間に戦線が崩壊し、誰しもが敗北を予感した。

 とどめの一撃が振り下ろされようとしたその時、比古が颯爽と駆け付け、巨人・不二の一撃を難なく受け止める。そればかりか、比古は怪物然とした不二の内に確かな剣の腕前と武人としての心が宿っていることを見抜き、全力の勝負を挑むのである。

 そして不二が全身全霊の一太刀を放つ。だが比古の異次元の強さには及ばず、最後は飛天御剣流の技である九頭龍閃を受け、倒れることになった。

 人間離れした巨人を易々と相手取る姿もさることながら、太刀筋から相手の本心や背景を見抜く鋭い観察眼からも、他のキャラとは一線を画す比古の達人ぶりが伝わってくる。

■鬼殺隊、屈指の実力者たち『鬼滅の刃』

 劇場版アニメ『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が世界歴代興行収入1位を獲得し、なおも大きな盛り上がりを見せている吾峠呼世晴さんの『鬼滅の刃』。

 人と鬼との壮絶な死闘が繰り広げられる作品だが、なかでも強力な援軍に読者が胸躍らせたのが、鬼殺隊にも甚大な被害をもたらした「那田蜘蛛山編」だろう。

 体力を消耗し、徐々に追い詰められていく主人公・竈門炭治郎たち。そんな彼らを救うべく現れたのが、鬼殺隊屈指の実力者である柱の面々だった。

 なかでも、蟲柱・胡蝶しのぶは敵の一人・姉蜘蛛と対峙。終始、余裕たっぷりの笑みを浮かべたまま、洗練された突き技と、彼女の代名詞ともなっている毒の力で瞬く間に姉蜘蛛を滅してしまう。

 さらに圧倒的だったのが、もう一人の援軍である水柱・冨岡義勇の活躍だ。

 彼は嘴平伊之助を追い詰めていた強敵・父蜘蛛をいともたやすく撃破。続いて、炭治郎のもとにも駆け付け、十二鬼月の一人・累と真っ向から対峙することに。

 その高い実力で炭治郎を絶望させた累だったが、義勇は彼の攻撃を「拾壱ノ型 凪」で完全に無効化し、一太刀のもとに頚を落とし、勝利してしまうのだった。

 柱たちが持つ圧倒的な実力と、炭治郎らを導く者としての頼りがいのある姿を存分に堪能できるエピソードだ。

 

 規格外の強敵たちを前に、仲間たちが疲弊し倒れていく……。そんな絶望的な状況だからこそ、颯爽と現れる援軍の姿には、作中のキャラクターのみならず読者の心も大いに救われる。

 これまで仲間たちを苦しめ、追い詰めてきた強敵を、持ち前の実力で難なく撃破してしまう姿はまさに圧巻の一言である。その頼もしい姿を目の当たりにし、一気に彼らのファンになってしまったという読者も少なくはないだろう。 

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