
漫画の物語において、強敵たちの圧倒的な力や策略により、登場人物たちが窮地に追い詰められる場面は珍しくはない。特にバトル漫画では、敵キャラクターの凄まじい戦闘能力を前に「もはや、これまでか」と、読者までもが絶望の淵に立たされてしまうこともある。
だからこそ、仲間たちの窮地を救うために颯爽と現れる強キャラたちの勇姿は、読者に強烈なカタルシスをもたらすのだ。
今回は、読者に希望を取り戻させた、援軍到来の名場面を振り返っていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■誰しもが待ち望んだ、我らが主人公!『ドラゴンボール』
バトル漫画の金字塔である、鳥山明さんの名作『ドラゴンボール』。本作には数多くの強敵が登場するが、なかでも主人公・孫悟空が援軍という形で活躍したのが、「フリーザ編」での一幕である。
地球に襲来したベジータらとの激闘で悟空が重傷を負い、多くの仲間たちが命を奪われてしまう。仲間を生き返らせるため、クリリンたちは悟空を地球に残し、わずかなメンバーで新たなドラゴンボールがあるナメック星へと旅立つことに。
だが、ここではベジータのみならず、悪の帝王・フリーザや彼の手下たちがすでに熾烈な争いを繰り広げていた。クリリンや悟空の息子・孫悟飯も命を落としかけるなか、傷を完治させた悟空が宇宙船で駆けつける。
到着直後、フリーザ配下の精鋭部隊・ギニュー特戦隊との戦いにもつれ込むのだが、悟空は強敵・リクームをなんと一撃で撃破。さらに、バータとジースの二人組を気だけで吹き飛ばし、超高速を誇るバータの背後をあっさりと取り、苦戦することなく叩き伏せてしまった。
その後、隊長であるギニューも駆けつけるのだが、全力を出した悟空の戦闘力に唖然とするなど、フリーザ軍の実力者たちが霞むほどの凄まじい強さを見せつけたのである。
フリーザ軍の凶悪さに絶望していた読者も、持ち前の明るさと底抜けの強さで活躍する悟空の登場に、思わず胸を躍らせてしまったことだろう。
■人類最強の名は伊達じゃない…『進撃の巨人』
人を喰らう怪物・巨人と、人類の生き残りをかけた壮大な戦いを描いた『進撃の巨人』(諫山創さん)。
作中では登場人物が命を落とす絶望的なシーンも多いのだが、主人公、エレン・イェーガーたちの窮地を救い、希望の光となったのが、作中屈指の強キャラであるリヴァイ・アッカーマンだろう。
“人類最強の兵士”と称されるリヴァイは、その桁外れの戦闘能力で数々の死線を乗り越えてきた。そんな彼が援軍として登場したのが、エレンたちが破壊されたトロスト区の門を塞ごうと奔走していた際の一幕だ。
エレンは自身の巨人化の力を使って穴を塞ごうとしたのだが、まだその能力が不安定だったため、暴走の果てに気を失ってしまう。
倒れたエレン、そして仲間であるミカサ・アッカーマンやアルミン・アルレルトを多数の巨人が取り囲んでいくのだが、その絶体絶命の危機にリヴァイが駆けつけ、瞬く間に巨人たちを殲滅してしまう。
立体機動装置を駆使して空から舞い降り、高速回転しながら正確に巨人の急所であるうなじをそぎ落としていく戦闘技術は、まさに別格。倒れた巨人を踏みつけ降り立つ姿はとにかく格好良く、この登場シーンで心を奪われた読者も多いのではないだろうか。
エレンらに向けて放った「オイ…ガキども…これは…どういう状況だ?」というぶっきらぼうな一言にも、リヴァイのキャラクター性が見事に表現されている。