
国民的RPGシリーズ『ポケットモンスター』(任天堂)には、「幻のポケモン」と呼ばれるレアなキャラクターが存在する。普通の遊び方では決して入手できず、公式イベントでの配布でのみゲットできる彼らは、初代『ポケットモンスター 赤・緑』から子どもたちの羨望の的だった。
配布イベントやオンライン交換が盛んになった近年では、比較的ゲットしやすくなった幻のポケモン。だが、『赤・緑』に代表される平成時代のレトロ『ポケモン』作品においてはそうもいかず、とてもハードルが高い存在だった。バグ技などを用いず「正規」の幻のポケモンを持っている強者は、クラスの英雄だったものだ。
そこで今回は、レトロ『ポケモン』で手に入れるのが大変すぎたポケモンを振り返っていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■手に入らずバグ技に手を出すトレーナーも!?『赤・緑』ミュウ
『赤・緑』で登場した“しんしゅ(新種)ポケモン”の「ミュウ」は、幻のポケモンの元祖と呼べる存在だ。
本来ゲームに登場する予定はなかった「151匹目」のポケモンであるミュウは、本来製品版では使われない空きスペースにこっそり追加されたといわれている。
全150匹のポケモンには、いるはずのない151匹目がいる——通常プレイでミュウは登場しないにもかかわらず、そんな噂が当時の子どもたちの間で爆発的に広まり、誰もがゲットしようと躍起になった。
その声に応える形で、『コロコロコミック』(小学館)にて、ミュウをプレゼントする応募イベントも催されたが、1回目は抽選20名に対し応募者が約7万8000人、2回目は当選枠が100人に拡大されたものの、応募者が8万人に膨れ上がるなど、競争率は凄まじかった。
その後も、ミュウの配布イベントは何度かおこなわれるが、やはり狭き門だった。
1996年8月に開催された「次世代ワールドホビーフェア」では、会場にやってきた子どもにミュウをプレゼントするサプライズが催されたり、翌年以降は万単位での大規模配布イベントも実施されたが、残念ながら希望するプレイヤーみんなに行き届いたとは言えないだろう。当時の筆者も可能な限りチャレンジしたが、結局『赤・緑』で正規のミュウと出会うことは叶わなかった。
それでも、どうしてもミュウが欲しい子どもたちの中には、不正な操作でミュウを呼び出す裏技、通称「ミュウ捕獲バグ」に手を出す者もいた。この裏技はセーブデータを破壊する危険性を伴っていたが、それでも、“ミュウに会いたい”という純粋な気持ちに突き動かされた人は少なくなかったのである。
■時代を先取りしすぎたモバイル配布『金・銀』セレビィ
シリーズ第2作『ポケットモンスター 金・銀』の幻のポケモン、“ときわたりポケモン”の「セレビィ」も入手がかなり厳しかった。
こちらも通常プレイでは登場せず、公式の入手手段はミュウと同様、イベントでの配布がほとんど。本編では「ウバメのもり」にある謎の祠においてその存在を匂わされるだけで、セレビィを呼び出すデマ情報も飛び交っていた。
公式の入手手段は、やはり抽選形式のイベントや、特定の会場へ行く必要があるものがほとんどで、入手のハードルは高かった。
しかし、『金・銀』のマイナーチェンジ版『ポケットモンスター クリスタルバージョン』では、当時としては画期的な試みがおこなわれた。それが、携帯電話と連動したサービス「モバイルシステムGB」を介したセレビィの配信企画である。
これは特定の期間に「モバイルシステムGB」を通してアイテムの「ジーエスボール」を入手し、「ウバメのもり」の祠に持っていくとセレビィが出現するという特殊イベントであった。
家にいながら確実にセレビィと出会える夢のような企画……と、言いたいのだが、そうではなかった。
「モバイルシステムGB」を利用するには、当然ながら携帯電話が必要となる。『クリスタル』が発売された2000年当時、携帯電話は現在のスマホほど普及していたとは言えず、『ポケモン』のおもなプレイヤー層であった子どもたちにとってはあまりにハードルが高すぎる“大人のアイテム”だったのである。
筆者自身も当時は携帯電話を持っておらず、残念ながら家族も使っていなかった。「セレビィが欲しいからケータイ買って!」なんてワガママが通るわけもなく、セレビィはゲットできなかった。
ゲーム機を使ったオンライン配布イベントの盛況ぶりを見ると、「モバイルシステムGB」はあまりにも時代を先取りしすぎたサービスであったと言えるだろう。