青山剛昌さんによる『名探偵コナン』は原作漫画はもちろん、アニメも絶大な人気があるコンテンツだ。アニメならではの要素として、原作にはないアニメオリジナルストーリー、通称「アニオリ回」がある。
アニオリ回のストーリーは原作者ではなくアニメ脚本家が手がけるため、時に奇想天外であったり、ホラー、コミカルなど原作とは異なるテイストだったりするのも魅力的だ。今回はその中でもファンから「神回」と評価されるエピソードを振り返っていこう。
※本記事には作品の内容を含みます
■初期の傑作アニオリ回!「顔パック殺人事件」
初期のアニオリ回における傑作が、第45話「顔パック殺人事件」だ。顔パックを使ったトリックは視聴者に強い印象を残し、往年のファンにも人気の高いエピソードとして知られている。
2014年12月20日にはデジタルリマスター版が再放送されるなど、その面白さはいまだに色あせない。
この回は30分の単発エピソードでありながら、二重に仕掛けられたミステリーが楽しめる構成だ。最大の見どころは、パックをすると素顔がわかりづらくなることを巧みに利用したトリックである。
被害者は50歳の女性・児島郁子。彼女は自宅でスキンケア用の顔パックをつけた状態で絞殺されていた。死亡推定時刻はかなり正確にわかっている。郁子の自宅で警報装置が誤作動し、警備員が訪れた際、顔パックをしたままの彼女と会話していたからだった。
つまり、警備員と会話したとき、郁子は生きていたということになる。しかし、これこそが顔パックを使ったアリバイトリックだった。この時玄関先に現れた女性は、郁子になりすました28歳の娘・児島千尋であり、これにより死亡推定時刻を誤認させることに成功したのである。
しかも、このエピソードは顔パックのインパクトだけでは終わらない。実は千尋は偽装工作はしたものの、犯人ではないのだ。アリバイトリックを看破しただけでは解決しない二重の謎があり、30分で重厚なミステリーを見事に実現した点が、神回と評価される所以だ。
脚本は、アニメ『名探偵コナン』の初期を支えた日暮裕一さんが担当している。子ども向けの雰囲気を保ちつつ、大人も唸らせるミステリーという本作の黄金パターンを見事に完成させていることも見逃せない。
■アニオリ初の1時間スペシャル「呪いの仮面は冷たく笑う」
アニオリ回で初となる1時間スペシャル「呪いの仮面は冷たく笑う」は、ミステリーの魅力が凝縮されたエピソードだ。大豪邸に集められた招待客、そこで起こる密室殺人、そして200枚の呪いの仮面……と、ミステリーファンにとってはたまらない要素が満載だ。
2004年と2018年と2度再放送されており、合計3回も放送された事実が、本作がいかに稀有なエピソードかを物語っている。
あらすじを簡単に見ていこう。蘇芳紅子が主催するチャリティーショーに参加することになった毛利小五郎と、付き添いの毛利蘭、江戸川コナン。招かれた紅子の屋敷には、「所有者に呪いがかかる」といわれる200枚の仮面が飾られる不気味な「仮面の間」があった。
同じくチャリティーショーに参加する著名人と交流する小五郎たち。しかしその深夜、紅子が大量の仮面が散らばる密室で、刺殺体として発見された。コナンはこの呪いの仮面と密室の謎に挑むことになる。
本作は「ハウダニット(どうやって犯罪が行われたのか)」に特に重きを置いたミステリーで、トリックがアニオリ回らしく独創的だ。200枚の仮面を巧みに使い部屋の外から刺殺するという奇抜なトリックに加え、動機の後味の悪さも際立っている。
脚本を担当した於地紘仁(当時の名義は越智浩仁)さんは、『名探偵コナン』の監督を務めたこともある人物だ。作品を知り尽くしているからこそ、初期の雰囲気を生かしながら呪いの仮面を想像もつかない方法で使うという、視覚的にも印象的な事件に仕上げている。


