■気に入れば誰でも妻に…天竜人夫人となる悲惨な末路

 天竜人は、自らの欲望のままに女性を「妻」として奪い去ることもある。気に入った女性はその場で唐突に連れ去られ、形式上、妻として扱われる。だが、飽きれば簡単に捨てられ、再び一般市民へと戻されるという非人道的な仕打ちが横行していた。

 この実態が初めて描かれたのは「シャボンディ諸島編」である。チャルロス聖が突如として看護師の女性を「よし 妻にしてやるえ」と宣言し、第13夫人としてマリージョアへとそのまま強制連行。この際、その女性の婚約者だと名乗り出た男性は即座に銃殺されており、この一件は天竜人の悪辣さを読者に強烈に印象づけた。

 物語が進み、「エッグヘッド編」ではバーソロミュー・くまの過去が明らかになり、さらなる悲劇が発覚する。

 バーソロミュー・くまと同じく奴隷であり、ゴッドバレーでの一件で解放された女性・ジニーが、天竜人に再び見初められ、強引に妻として連れ去られてしまう。そして、彼女が産んだ娘こそが「最悪の世代」の一人、ジュエリー・ボニーだった。この衝撃的な事実は、少年誌ではなかなか見ないレベルの虫唾が走る展開と言えるだろう。

 妻という立場であれば、奴隷とは違って穏当な扱いをされるかと思いきや、ジニーは五老星の一人、ジェイガルシア・サターン聖によって薬物実験の被験者にされるなど、尊厳も何もない扱いを受けていた。

 “天竜人の妻”という立場が決して幸福ではないことを象徴するエピソードである。

■史上最悪の催し? 先住民を一掃する「大会」

 ここまで紹介してきたように数々の悪行を重ねている天竜人だが、その中でも規模と非道さにおいて群を抜いているのが、3年に一度開催される「先住民一掃大会」と呼ばれるイベントだ。

 これは、世界政府非加盟国を舞台に、非加盟国に暮らす一般の民や、連れてこられた罪人、問題を抱える奴隷たちを“脱兎(ラビット)”という標的にして、まるで狩りの対象かのように撃ち殺したり、切り殺したりする催しだ。希少な種族は特別なレアターゲットとして扱われ、より多くの脱兎を仕留めた者には豪華な景品が贈られる。

 この大会の対象となった非加盟国は、たとえ国王であろうと容赦なく一掃のターゲットとなり、国自体は強制的に乗っ取られてしまう。まさに、海賊も真っ青の略奪行為であり、天竜人の非道な支配ぶりを象徴するものである。

 作中では38年前にゴッドバレーが開催地となり、バーソロミュー・くま、エンポリオ・イワンコフ、ジニーといった、多くの重要人物が参加させられた。陰謀や策略によってロックス海賊団やロジャー海賊団、モンキー・D・ガープら海軍と神の騎士団が衝突する事態に発展し、最終的にいかなる理由かは不明だが、島もろとも地図から跡形もなく消滅した。

 以降、この大会が実際に開催された描写はないが、非加盟国の住民や奴隷を同じ人間と思わない天竜人だからこそ開催できた史上最悪のイベントであることは間違いない。

 

 現在、最新話ではロックス・D・ジーベックやゴール・D・ロジャーが活躍した「過去編」が描かれており、ゴッドバレーの詳細もだんだんと明らかになっている。非道を尽くした天竜人の悪行も浮き彫りとなり、彼らに対してあらためて憤りを感じた読者も多いことだろう。

 ルフィらが、この悪逆非道な天竜人の牛耳る世界から人々をいかにして解放するのかといった点も含めて、今後の展開に期待したいところだ。

  1. 1
  2. 2
  3. 3