■不便さが生む「冒険の実感」

 もちろん、初代はファミコン時代に生まれたゲームだけに現代的な便利さはない。フィールド上にマップ表示はなく、自分がどこにいるのかもわからない。強敵に遭遇しては一撃でやられ、スタート地点に戻されることも珍しくない。ダンジョンを進んでいても「必要なアイテムがまだ手に入っていない」と気づかされ、引き返す羽目になることも多々ある。

 とても効率的とは言いがたいが、その不自由さが逆に「冒険している」と実感させられる。自分は、装備が整わないまま奥のほうまで冒険してしまったなと、多すぎるアイテムの空欄具合で思い知らされた。

 今では考えにくいが、NINTENDO64あたりまでのゲームでは、ゲーム内で提示された情報を紙に書きとめることを当たり前にやっていた。

 そこで、この機会に自分も1画面進むごとにノートに簡単な図を描いてみた。これが思いのほか楽しい。マス目が埋まっていくごとに、自分自身の足跡が刻まれていく感覚がある。単なるゲームの進行が、まるで冒険記録のように感じられたのだ。

 ちなみに「Nintendo Switch Online」でプレイできる『ゼルダの伝説』には、「どこでもセーブ」と「巻き戻し」機能がある。ミスした場合もすぐにやり直せるので、スタート地点にいちいち戻されるといったストレスはかなり軽減されている。

 もっと言えば、ルピーやアイテム、装備が初めからもりもりの「お金持ちバージョン」も配信されている。ストレスフリーで遊びたいなら、こちらをプレイするのもおすすめだ。

 余談だが、ニンテンドーDSも発売から20年が経ち、レトロゲームに片足を突っ込んでいるが、『ゼルダの伝説 夢幻の砂時計』ではゲーム中の地図にタッチペンを使って手描きのメモを書き込むことができた。それはとても画期的で便利だと思ったものだ。


 初代『ゼルダの伝説』を初めて遊んで強く感じたのは、シリーズの骨格がすでに完成していたという事実だ。ライネルのような強敵、爆弾や弓矢、ブーメランといった定番アイテム、そして冒険そのものを体感させる構造。これらは、令和の時代に遊んでもなお色褪せない。

 平成生まれの自分にとっては、古典を嗜むというよりは、いろんな意味で“新鮮な挑戦”だった。「Nintendo Switch Online」を通じて、かつてのプレイヤーたちが味わった冒険の息吹を再び感じられるのは、とてもぜいたくな体験である。

 今も最新作でゼルダに触れている世代だからこそ、あえて初代に立ち返る価値は大きい。なるほど、Z世代が昭和レトロを「新鮮」だと感じるのは、こういう感覚なのだろう。

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