■ライダーが人を殺める!?『仮面ライダービルド』ハザードフォーム

 平成仮面ライダー19作目『仮面ライダービルド』は、日本が東都、北都、西都に分断され、戦争が繰り広げられるというシリアスな世界観が特徴だ。その中で描かれたハザードフォームは、シリーズ屈指の衝撃的な暴走描写としてファンの間で語り継がれている。

 初登場は第20話「悪魔のトリガー」。仮面ライダークローズ(万丈龍我)が単身で戦火に飛び込むのを止めるため、主人公・桐生戦兎は禁断の強化アイテム・ハザードトリガーを使用してしまう。その漆黒のボディは見るからに凶暴性を秘めており、戦闘力を飛躍的に高める代償として、変質者の理性を容赦なく奪い去っていった。

 一時はハザードフォームの力で万丈を制止することに成功した戦兎。しかし、暴走は止まらず、仲間である万丈さえ敵とみなし攻撃。さらに北都の兵士たちを次々と撃破し、ついには北都三羽ガラスの一人・青羽を自らの手で葬ってしまう。

 相手は本作の怪人=スマッシュ化した兵士であったが、その正体は人間にほかならない。「ヒーローが人の命を奪った」という事実は、戦兎の心に深い傷を残し、彼から戦意を喪失させる。

 このフォームが衝撃的だった理由は、単なるデザインや強さだけではない。「力の代償として暴走し、主人公が取り返しのつかない罪を犯してしまう」という、禁断の一線を描いた点にあるだろう。

 戦うことの罪と覚悟。『ビルド』が持つシリアスなテーマを最も端的に視聴者に突きつけたのが、このハザードフォームであった。

 

 『仮面ライダー』の暴走フォームは、単なる強化形態ではない。視聴者に強烈な衝撃を与えるのは、「正義の象徴がもし怪物になってしまったら」という恐怖と、それでも「戦わなければならない」という切実さが描かれているからだ。

 「怪人の力を抱えながら、それでも正義のために戦う」という構図は、原作者である石ノ森章太郎さんが、本作に込めた原点の発想でもある。暴走フォームという存在は、その考え方を今の時代に合わせて表現したものと言えるのではないだろうか。

 だからこそ暴走フォームは、ただの強化フォーム以上の意味を持ち、ファンの心に深く刻まれ続けるのである。

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