ヒーローが怪物化? 『クウガ』に『オーズ』、『ビルド』にも…歴代『仮面ライダー』視聴者も震えた「主人公の暴走フォーム」の画像
Blu-ray BOX『仮面ライダークウガ』第1巻(東映ビデオ)(C)石森プロ・東映

 『仮面ライダー』シリーズにおいて、視聴者の心を強く揺さぶる劇的展開のひとつが“主人公ライダーの暴走”だ。正義の象徴であるはずのライダーが、力に呑まれ理性を失い、時には仲間さえも傷つけてしまう。その姿は単なるパワーアップとは一線を画し、恐怖と同時に深い痛ましさを伴っている。

 今回は、平成から令和にかけて登場した歴代ライダーの中でも、とりわけ視聴者に衝撃を与えた“暴走フォーム”を振り返り、その魅力と恐ろしさをあらためて探っていきたい。

※本記事には各作品の内容を含みます

■暴走フォームの原点『仮面ライダークウガ』アルティメットフォーム

 平成仮面ライダーの幕開けを飾った『仮面ライダークウガ』。その最強形態であるアルティメットフォームは、のちの暴走フォームの原点ともいえる存在だ。その登場シーンは最終局面である第48話「空我」のわずか2分ほど。しかし短い出番ながら、観る者の記憶に鮮烈な印象を刻みつけた。

 漆黒のボディに金色のラインが走り、頭部の角は2本から4本へと分かれ、顎のクラッシャーも牙のように鋭く変貌。より攻撃的なシルエットは、数ある形態の中でも突出した異質さを放っていた。

 作中で「凄まじき戦士」と呼ばれるように、その能力も圧倒的だ。手をかざすだけで周囲にある原子や分子を操り、プラズマ化による発火を起こす“超自然発火能力”。これにより繰り出される拳の一撃一撃は、必殺技級の破壊力を秘めている。

 しかし同時に、この姿はひとたび暴走してしまえば「究極の闇をもたらす者」となる危険性を抱えており、まさに禁断の力そのものだった。

 最強のラスボス・ン・ダグバ・ゼバを前に、それまでの最強形態であったアメイジングマイティですら歯が立たなかった仮面ライダークウガ(五代雄介)。追い詰められた彼は、ついにアルティメットフォームへの変身を決断する。

 雪山での最終決戦に向かう直前、変身ベルト“アークル”を押さえながら、ともに戦ってきた警察官・一条薫に「狙うときはここをお願いします」と、自身が暴走した後の“後始末”を託す。五代の決死の覚悟が見られるこのシーンでは、クウガのアルティメットフォームが単なるパワーアップではなく、まさに命を懸けた決死の暴走フォームであることを物語るものであった,。

■最後まで制御しきれなかった『仮面ライダーオーズ/OOO』プトティラ コンボ

 平成仮面ライダー12作目『仮面ライダーオーズ/OOO』は、人間の“欲望”をテーマに描かれた作品である。その象徴ともいえる暴走フォームが、恐竜系コアメダルによって誕生したプトティラ コンボだ。

 オーズは生物の特性を宿したコアメダルを3枚組み合わせて戦うライダーだ。プトティラ コンボはプテラノドン、トリケラトプス、ティラノサウルスという恐竜系の力を集約した特別なコンボであり、その強大さは変身者・火野映司をも本作の怪人=グリード化へと近づける危険性をはらんでいた。つまり「オーズ自身が怪人化し暴走する可能性」を常に秘めた姿だったのである。

 初登場は第32話「新グリードと空白と無敵のコンボ」。映司が恐竜系ヤミーに追い詰められた際、突如として恐竜メダルが強制的に反応し、映司本人の意志とは無関係に変身。

 紫を基調とした美しい装甲をまとう一方で、その姿には禍々しさが漂っており、圧倒的な力で敵を殲滅していく。さらには仲間である仮面ライダーバース(伊達明)にまで牙をむき、暴走フォームの恐ろしさを印象づけた。

 その後、映司は徐々に意志を保ちながらプトティラ コンボを使いこなし、本作における最強フォームとして最終決戦まで活躍する。しかし、最後まで完全には制御できず、常に不安定さを残したまま戦い続けた点が特徴的である。

 多くの作品で暴走フォームは最終的に克服され、主人公の力として昇華されるのに対し、プトティラ コンボは最後まで「危うい切り札」であり続けた。極めてまれな暴走フォームであり、最強フォームだったと言えるだろう。

  1. 1
  2. 2
  3. 3