■【単行本37巻】石膏デッサンのようなモレナ=プルードと表紙カバー折り返しのセリフ
単行本37巻の表紙には、カキン帝国の三大マフィアのひとつであるエイ=イ一家組長モレナ=プルードが登場。注目すべきはこれまでのイラストとテイストが異なり、石膏デッサン風に描かれていることである。
石膏デザインとは木炭や鉛筆などで、石膏でできた彫像をデッサンする美術技法だ。そして、単行本37巻の表紙カバーの折り返しには、鉛筆でシャカシャカと黒く塗るイラストとともに「永遠に終わらないのではという作業」という冨樫氏のメッセージが記載されている。
これは表紙のモレナを描く作業のことを指していると推察され、さらにイラストの下部には「あきらめたのでそこで制作終了。」とも記されていた。
この言葉は『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載されていた井上雄彦氏の『SLAM DUNK』に登場する安西先生の名セリフが元ネタだろう。
安西先生の「あきらめたらそこで試合終了だよ」はネットでも乱発されまくった大人気ミームのため、冨樫氏もただ使ってみたかっただけという可能性もある。しかしこれを深読みすれば、モレナの「世界を壊す」という野望が、道半ばで終了するという伏線とも読み取れないだろうか。
モレナがカキン帝国の王位継承戦に介入して、王位を奪うことは可能かもしれない。しかし、世界を敵に回すとなると難易度は別格であり、他国やハンター協会に阻止されそうだ。
また37巻の表紙のモレナが石膏デザイン風に描かれているのは、念能力によって彼女が石化させられる結末を示唆しているのかもしれない。最後は石となって彼女の命と野望が終わりを迎えるのだろうか。
このほかにも12巻と36巻の表紙絵が、幻影旅団のメンバーの過去と現在を表し、命を落とした旅団メンバーの場所には花が描かれていた。それに加えて折り返しには冨樫氏の「ネタバレ。あえてね。」という意味深なメッセージとともに、閉じた唇の絵も……。これも何かの伏線の存在を意味していそうだ。
ファンとしては『HUNTER×HUNTER』の連載再開が待ち遠しいのは当然だが、新刊の単行本の表紙に何が描かれるのかも興味深い。
毎回伏線が張られているわけではないが、予想が当たっていようが外れていようが、アレコレと考察するのが今から楽しみである。そして、これまで幾度も裏切られたように、予想のナナメ上をいく謎が明かされる日を期待してしまう。