■キレキレすぎる超人級のアクション『ザ・ファブル』

 南勝久さん原作の漫画を実写化した映画『ザ・ファブル』(2019年公開)。「どんな敵でも6秒以内に殺す」と言われる殺しの天才・ファブルを主人公に、彼の人間離れしたアクションが魅力の作品だ。

 ファブルこと佐藤明を演じた岡田さんは、本作でも超人級のアクションを披露。ボスからの命令で“一年間、誰も殺さずに一般人として暮らす”ことになったファブルは、命を取らない絶妙な手加減で敵を次々と倒す。一般人のゴロツキの攻撃をわざと受けて派手に吹っ飛んだり、パンチを額で受け止めて逆に相手の指の骨を折ったりと、弱者を装うプロとして振る舞う。

 相手を完全に凌駕する高度な技術を駆使し、「あくまで弱者」として戦いを優位に進めるファブルを、岡田は時にコミカルな表情を交えながら巧みに演じている。

 しかし、平穏に暮らそうとするファブルの想いとは裏腹に、戦闘は次第に激しくなっていく。最終的にファブルの真骨頂でもある超人的なアクションが見られる展開は、見応えたっぷりだ。

 2021年には続編『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』が公開され、岡田さんは主演兼ファイトコレオグラファーとしてアクション演出を手がけた。

 前作を凌ぐ攻めたアクションを目指した本作では、冒頭から命綱一本で暴走する車の屋根に乗り、時には引きずられながら車内の少女を救出するという、スリル満点のシーンが描かれている。

 特に最大の見せ場である団地での戦闘シーンでは、巨大な団地を丸ごと一棟貸し切っての大規模なロケーションが組まれた。崩壊する足場の上でぶら下がったり走り抜けたりと、日本映画のスケールを超えたアクションは大きな話題を呼んだ。

 岡田さんは現場のスタッフから「岡田師範」と呼ばれるほど、アクションチームを牽引していた。演じるだけでなく、演出家としても大きく進化するきっかけになった作品と言えるだろう。

 

 岡田さんはストイックすぎる姿勢から、共演者からも一目置かれている。共演した佐藤浩市さんが、思わず「アクションで絡みがなくてよかった」と漏らすほど、岡田さんのアクションに対する探究心は良い意味で“異常”なのだろう。

 演出家として、演者として、全身全霊でアクションに打ち込む岡田さん。ノースタントであることが信じられないアクションの数々を、ぜひその目で確かめてみてほしい。

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