■言葉を発さない少女を体現『心が叫びたがってるんだ。』芳根京子
過去の悲しい出来事がきっかけでしゃべれなくなった少女が、さまざまな人々と触れ合い、己にかかった呪いと向き合っていく『心が叫びたがってるんだ。』。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の制作スタッフが再集結して作られたことでも、話題を呼んだ。
2017年に公開された実写映画版において、このしゃべれない女子高生・成瀬順を演じたのが、芳根京子さんだ。
本作の演技でもっとも重要となるのは、トラウマによって一切言葉を発することができない順の感情をいかに表現するかという点だろう。
順は他人とのコミュニケーションを筆談やメールでこなすため、芳根さんはちょっとした表情の変化や動作だけで、彼女の思いや感情を表現しなければならなかった。
だが、この難易度の高い役柄を、芳根さんは全身を使った表現で、順の喜怒哀楽や迷い、葛藤を見事に体現。
音楽に合わせ体を揺らす様子や、教室を移動する際の足取りといったわずかな所作で、しゃべれない女子高生の内面が見事に映し出されていた。
しかも芳根さんは、役作りのために自身の髪の毛を約30センチもカットし、原作同様のボブヘア姿を披露している。卓越した演技力のみならず、作品に真摯に向き合うストイックな姿勢には、ただただ圧倒されてしまう。
■ぞくりとするような妖しさ…『地獄少女』玉城ティナ
ウェブサイトに恨みを書き込んだ人々の復讐を遂行する不思議な少女と、彼女と契約した人々の心の闇や業を描いた『地獄少女』。ダークな世界観が魅力のミステリーホラー作品で、その高い人気から、アニメのみならず舞台やドラマなど、さまざまなメディアで展開されてきた。
数ある実写化の中でも、特に原作との親和性を見せつけたのが、2019年公開の映画で地獄少女・閻魔あいを演じた玉城ティナさんだろう。
モデルとしても活躍している玉城さんの抜群のスタイルは、浮世離れしたあいのキャラクター像にぴったりだった。原作のあいが持つ少女らしさに比べ、少し大人びた印象を受けるが、それにより冷たく妖しい色気や、ミステリアスな雰囲気がより一層際立っている。
ビジュアル面でも圧巻の再現度で、艶やかな黒髪と刺繡を施された黒の着物を身に纏って立つ姿からは、あいの持つ危険性と洗練された美しさが表現されていた。
極めつけは「いっぺん、死んでみる?」の決め台詞。怖さ、妖しさ、美しさ……ひと言では言い表せない、ぞくりとするような玉城さんの表現は必見だ。
キャラクター像に自分ならではの個性を融合させつつ、原作が持つダークな魅力を存分に引き出した玉城さん。説得力に満ちた地獄少女を誕生させていた。
アニメヒロインという大役に挑んできた数々の女優たち。いずれも美しい容姿と卓越した演技力で、役に命を吹き込んできた。
こうして見てみると、ヒロインを演じた彼女たちは、それぞれ原作アニメを徹底的に研究し、キャラクターの個性を自身の演技に取り入れていた。役作りには苦労もあっただろうが、完成した作品を見てみると、まるでアニメから飛び出してきたような再現度で観る者を感動させてくれる。
女優たちが実写の世界へ降臨させたヒロインたちの活躍を、この機会に見てみてはいかがだろうか。