
『君の名は。』や『すずめの戸締まり』などを手がけた、新海誠監督の不朽の名作『秒速5センチメートル』(2007年公開)。2025年10月10日より、同作を実写化した映画が公開されることが発表され、大きな話題を呼んでいる。
本作では主人公・遠野貴樹役に松村北斗さん、ヒロイン・篠原明里役に高畑充希さんが抜擢されており、これまでのイメージとは異なった役柄をどう演じるのかと期待を膨らませるファンも多いだろう。
近年、多くのアニメ作品が実写化されてきたが、中でも物語の核となるヒロインをどう演じるかは、物語を彩る重要な要素だ。数々の女優たちがプレッシャーを乗り越え、アニメヒロインの姿を忠実に再現し、原作ファンを唸らせてきた。
今回は、卓越した演技力と役作りによってアニメヒロインたちを三次元の世界に見事に降臨させた、女優たちの活躍を見ていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■幽霊役を見事に演じた…『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』浜辺美波
幼い頃に死別した少女が幽霊となって現れたことをきっかけに、主人公の青年がかつての仲間たちとともに過去と向き合う青春群像劇『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』。
テレビアニメの高い人気を受け、2013年には劇場版アニメが公開され、2015年には実写ドラマ化もされている。
物語の鍵を握るヒロインは、主人公・宿海仁太の前に幽霊となって現れる少女・“めんま”こと本間芽衣子。この難役を演じたのが、浜辺美波さんである。
自身も原作ファンであった彼女は、めんまが見せる無邪気で天真爛漫な振る舞いを再現することに苦労したという。精神年齢が幼いままのめんまの感情の起伏を表現するため、浜辺さんはとにかくハイテンションな演技を意識し、さらにアニメの描写を見返して、キャラクターの持つ独特の動きのメリハリを自身の動きに取り入れていったそうだ。
当時、まだ中学生だった浜辺さん。原作のめんま同様、真っ白なワンピースを可憐に着こなし、笑顔から泣き顔まで幅広い表情を見せている。幽霊としての神秘的な雰囲気だけでなく、仲間と共に生きていた少女としての切なさや儚さを見事に表現していた。
複雑な背景を持つキャラクターゆえ、難易度の高い役柄ではあったが、浜辺さんの役作りが実を結び、原作の魅力を引き継いだ実写版ならではのめんま像を確立していた。
■等身大の女性を再現『耳をすませば』清野菜名
1995年にスタジオジブリによってアニメ映画化され、今もなお根強い人気を誇る不朽の名作『耳をすませば』。読書好きな女子中学生・月島雫が、バイオリン職人を目指す少年・天沢聖司との出会いをきっかけに自身の夢や恋に目覚め、前に進んでいく物語だ。
そして柊あおいさんの手がけた原作漫画の“10年後を描く”という新たな視点で、2022年に実写版映画が公開された。
10年後、出版社で編集者として働いていた雫。そんな彼女が、夢を追い、イタリアで暮らす聖司との距離に悩みながらも、再び自身の夢と向き合っていく姿を描いている。
この大人になった雫を演じたのが、清野菜名さんだ。映画『キングダム』シリーズの羌瘣役など、激しいアクションをこなす快活なイメージが強い彼女だが、本作では夢と現実の間で迷いながらも前に進んでいく等身大の女性を繊細に演じている。
国民的人気作のヒロインを演じる上で、大きなプレッシャーを感じてしまったと明かしていた清野さん。原作漫画やアニメ映画をあらためて見ることで、雫のはきはきとした態度やありのままの感情を前に出す性格、歩き方に至るまで細部を研究して役を落とし込んでいったという。
その結果、原作のキャラクターが持つみずみずしさはそのままに、大人になったからこその悩みや葛藤に揺れ動く新たな雫像を表現することに成功している。