イケメンよりも「ダンディ」が尊い!? 昭和娘が憧れた少女漫画「魅惑のおじさんキャラ」たちの画像
美内すずえ・著『ガラスの仮面 第47巻』(白泉社)

 子どもの頃に読んだ少女漫画に登場する、ダンディなキャラクターに惹かれた女性は多いだろう。

 同年代のイケメンも魅力的だが、「重みのある言葉」「ふとしたしぐさから感じる余裕」「達観した思考」など、大人の男性キャラならではの包容力に胸をときめかせた。

 たとえば、『はいからさんが通る』の主人公・花村紅緒の上司となる「青江冬星」。彼は、長い巻き毛で右目を隠した20代後半の美青年である。紅緒に恋心を抱きながら、伊集院忍に対する彼女の想いを知って、それ以上は踏み込まない。

 当時の少女たちは、そんな彼の大人な対応にダンディズムを感じたのである。

 なお、番外編で青江冬星は、フランスで出会った紅緒に似た少年ペールを引き取り、彼の成長を見届けて38歳で早逝。読者の心に深く刻まれた。

 「哀愁漂う背中」「無精ひげ」「いぶし銀の渋さ」など、大人のキャラに感じる魅力の部分は人それぞれあるだろう。そこで今回は、筆者が昭和の少女漫画で惹かれた、大人の魅力あふれるダンディなキャラを振り返ってみたい。

※本記事には各作品の核心部分の内容を含みます。

■探し求めた相手に己のすべてを注いだ男 『エースをねらえ!』宗方仁

 最初に紹介するのは、1973年より『週刊マーガレット』(集英社)で連載された山本鈴美香氏の傑作『エースをねらえ!』に登場する“鬼コーチ”宗方仁だ。

 名門西高テニス部に就任した新任コーチの宗方は、主人公・岡ひろみの素質を見抜いて代表選手に抜擢、厳しい特訓を課す。宗方が特別扱いしたことで、ひろみは先輩たちから陰湿なイジメに遭い、憧れの“お蝶夫人”こと竜崎麗香との関係に苦しむことになる。

 当初は理不尽な目に遭うひろみに共感したが、宗方がひろみを厳しく鍛える背景を知って、その切実な思いに涙することになる。

 宗方は父の不義で捨てられ、母は病死。祖父母と寂しい幼年期を過ごし、一時は荒れるが、テニスに生きがいを見いだす。そして異母妹の蘭子にテニスを教えるほどの選手になった頃、悲劇が襲う。

 テニスのトッププレイヤーとなった宗方は不治の病にかかっており、22歳の時に発作の影響で再起不能のケガを負う。そして余命3年と宣告されるのだ。

 不運の連続に絶望する宗方だったが、祖父の叱咤を受けて世界に通用する選手を育てることを決意。病魔に蝕まれた体で全国を探し、ついに天性の才能を持つひろみを見つけたのである。

 残りの人生のすべてをひろみに捧げて彼女は才能を開花させたが、宗方は容体が悪化して入院。渡米するひろみを安心させるために「後から行く」と気丈に振る舞うも、出発当日に病室で「岡 エースをねらえ!」と日記につづり、27歳の若さで亡くなった。

 あまりにも壮絶な宗方の生きざまに惹きつけられ、ひろみとともに号泣した読者は多いことだろう。

 コーチであるためにジャージ姿が多かったが、私生活では意外とシックな着物姿が多く、年齢以上に大人の魅力にあふれていた人物だった。

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