■手の甲に刻まれる階級…「藤花彫り」の仕組みとは?

 鬼殺隊には階級が存在し、階級のトップは先述した柱であり、それぞれ使う呼吸にならって「◯柱」と呼ばれている。

 入隊時は「癸」から始まり、「壬」「辛」「庚」「己」「戊」「丁」「丙」「乙」「甲」と、功績に応じて階級が上がっていくシステムだ。

 この階級は隊士の手の甲に特殊な技法「藤花彫り」で刻まれており、「階級を示せ」という特定の“言葉”に反応して筋肉が膨張することで、現在の階級を浮かび上がらせる。作中では、嘴平伊之助が拳に力を込め、庚の文字を浮き上がらせて見せていた。

 ちなみに藤襲山での最終選別の後、藤花彫りを施された炭治郎だが、疲労から“手をこちょこちょされた”程度にしか思っておらず、伊之助に言われるまでこのシステムに気づいていなかったようだ。

 功績によって変化する階級をいつでも確認できる便利な藤花彫り。自分の成長が見て取れるため、隊士の士気を高めることにも繋がっているだろう。

■隊士たちを陰で支えてくれる「藤の花の家紋の家」

 各地で鬼と戦っている鬼殺隊。そんな彼らにとって重要な休息拠点となるのが「藤の花の家紋の家」である。

 鬼が苦手とする藤の花を家紋に掲げるこれらの家は、過去に鬼殺隊に命を救われた一族が有志で運営している鬼殺隊の支援施設だ。

 無償で鬼殺隊をもてなしてくれる彼らは、食事や着替え、寝床の提供だけでなく、時には医師を手配するなど、手厚く隊士たちをサポートする。

 作中、炭治郎たちが戦いの怪我を癒すために立ち寄った家では、小柄な老婆が出迎え、温かくもてなしてくれていた。老婆が用意した天ぷらは、伊之助が夢中になるほど絶品だったようで、そんな豪華な食事からも、彼らの鬼殺隊に対する感謝の気持ちが見て取れる。

 出発の際には、道中の無事を祈って切り火で見送ってくれた老婆。鬼に怯えながら暮らす人々にとって、命をかけて鬼と戦ってくれる鬼殺隊がいかに希望の存在であるかがよく分かるシーンだ。

 彼らの支援なくしては、鬼殺隊の活躍もないだろう。実に心温まるシステムである。

 

 こうして振り返ってみると、鬼殺隊はさまざまな人たちに支えられていることがよく分かる。そして同時に、彼らが鬼という強大な敵と戦うことの過酷さも思い知らされる。

 恋柱・甘露寺蜜璃が去り際に、「今度また生きて会えるかわからないけど」と前置きをするように、隊士たちは常にいつ命を落としてもおかしくない環境に身を置いている。

 そんな隊士たちを最大限に支えるために考え抜かれたこれらのシステムは、『鬼滅の刃』の世界に深みを与える、見事な設定ばかりであった。

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