“育手”に“継子”、“鎹鴉”に“藤花彫り”も…『鬼滅の刃』鬼殺隊の組織を支える「地道な運営体制」の画像
DVD『鬼滅の刃 7』(完全生産限定版)(アニプレックス)©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 日本の映画史に残る大ヒットを飛ばす『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』。吾峠呼世晴氏による漫画『鬼滅の刃』の劇場版2作目にあたる本作は、前作『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』でも登場した、宿敵・猗窩座との死闘が描かれている。

 日本では古来から伝わる“鬼退治”をモチーフにしながらも、魅力的なキャラクターと独創的な物語で一線を画する本作。物語の面白さはもちろん、緻密に作り込まれた世界観も人気たるゆえんだろう。

 そこで今回は、『鬼滅の刃』に登場する鬼と戦う組織・鬼殺隊に注目し、隊を支える凄すぎるシステムについて解説していこう。

 

※本記事には作品の内容を含みます

 

■優れた剣士を育成して支える体制「育手」「継子」「隠」

 人を喰らう鬼を倒すために結成された鬼殺隊。入隊するには、命懸けの最終選別を突破しなければならない。

 主人公・竈門炭治郎は、鬼によって家族を殺され、唯一生き残った妹・竈門禰󠄀豆子を鬼に変えられてしまう。禰󠄀豆子を救うため下山する最中に、鬼殺隊に所属する水柱・冨岡義勇と出会い、その素質を認められ、現在は「育手(そだて)」である元水柱・鱗滝左近次を紹介される。

 この育手とは、鬼殺隊の次世代を担う若者たちを育てる指導者のことだ。彼らは鬼殺隊に入隊する候補者たちに剣技と呼吸法を教え込む。

 義勇もまた、鱗滝の元で鍛錬した弟子の1人であった。この育成システムが鬼殺隊を支える基盤と言っても過言ではないだろう。ちなみにメインキャラの我妻善逸もまた、元鳴柱・桑島慈悟郎のもとで厳しい鍛錬を積んでいた。

 そして、鬼殺隊に入隊した隊士の中には、「継子(つぐこ)」として、鬼殺隊の最高位の実力者である「柱」から直々に指導を受ける者もいる。

 柱合会議・蝶屋敷編で登場する蟲柱・胡蝶しのぶの継子であった栗花落カナヲは、炭治郎とは同期でありながら、入隊時点ですでにかなりの実力を持っていた。しのぶの指導で炭治郎たちが機能回復訓練をおこなった際には、カナヲとの実力の差に打ちのめされることになったほどだ。これは、特に才能のある隊士の力をさらに伸ばすための、いわばエリート育成のための制度と言えるだろう。

 そして、彼ら鬼殺隊の剣士たちの活動を支えるのが、事後処理部隊の「隠(かくし)」である。彼らは戦闘の後始末や負傷した隊士の手当など、戦いに身を置く隊士のサポートに撤する。その多くが、剣士として適性を持たない者であるとされているが、彼らの存在があってこそ、鬼殺隊の剣士たちは鬼との戦いに全力を注げるのだ。

 このように鬼殺隊は、育成からサポートまで盤石な体制が取られているのである。

■巧妙に守られた鬼殺隊の要「刀鍛冶の里」

 鬼を倒す上でなくてはならないものといえば、日輪刀だ。

 隊士は最終選別に合格すると、自身の刀の原料となる玉鋼を選び、それによって自分用の刀が10日から15日程度で作られる。この日輪刀を造っているのが刀鍛冶の里だ。

 鬼殺隊の要である里の場所は最高機密であり、たとえ柱であってもその場所を知ることはできない。

 炭治郎は遊郭編での激闘で日輪刀を破損したため、鬼殺隊当主・産屋敷耀哉の許可をもらい、里にいる担当の刀鍛冶である鋼鐡塚蛍のもとを訪れている。

 その際、目隠しと耳栓、鼻栓(炭治郎は鼻が利くため特別な対応)をされた上で、複数の案内役の隠がリレー方式で炭治郎を背負い、里まで運んだ。この隠たちですら、里の正確な場所は知らないという。

 里への道順や伝令役の鎹鴉さえも頻繁に変更されているそうで、鬼から里を隠すため、徹底したシステムが構築されている。この仕組みを知り、思わず炭治郎も「いやー 頭がいい人ってすごいね!」と感心していたほどだ。

 また、万が一の事態に備えて緊急時には速やかに拠点を移転できるよう、場所は複数箇所確保されている。これにより、上弦の鬼に襲撃された直後もすぐに里を移し、スムーズに復興を進めていた。

 鬼を倒すための唯一の武器である日輪刀を製造、維持するために必要不可欠な刀鍛冶の里。鬼殺隊を支援する優れた技術者たちを守るための、鉄壁の秘匿システムである。

■伝達を担う個性豊かな「鎹鴉」たち

 鬼殺隊に入隊すると、隊士にそれぞれ割り当てられるのが「鎹鴉(かすがいがらす)」だ。多くはカラスだが、我妻善逸のように例外でスズメが割り当てられることもあるようだ。その多くは人間の言葉を理解し、話すことができる。隊士たちにとっては、重要な相棒だ。

 大正時代を舞台にしている『鬼滅の刃』では、携帯電話のようにすぐに連絡できる通信手段はない。そこでなるべく早く伝令を伝えるため、この鎹鴉たちが重要な情報伝達網として機能している。彼らは伝令だけでなく、戦況を伝えたり敵の詳細をあらかじめ伝えたりと、鬼との熾烈な戦いの中でなくてはならない存在なのである。

 そんな鎹鴉は、個性豊かなことでも知られる。たとえば、炭治郎の鎹鴉、天王寺松右衛門は非常に優秀だが、少々毒舌で炭治郎をまるで自分の子分のように扱っていたり、霞柱・時透無一郎の鎹鴉である銀子はメスのカラスで無一郎を溺愛していたりと、隊士と鎹鴉のコミュニケーションの模様も、本作を彩る魅力の一つとなっている。

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