完全犯罪まであと少し…ドラマ『古畑任三郎』視聴者をハラハラさせた「最強の犯人」は誰かの画像
DVD『古畑任三郎 3rd season 1』  (C) フジテレビ/共同テレビ

 三谷幸喜さんが脚本を担当した『古畑任三郎』シリーズ(フジテレビ系)は、放送が終了して20年近く経った今も、根強い人気を誇る。

 田村正和さん演じる風変わりな刑事・古畑任三郎の前に、毎回豪華な俳優陣が犯人役として立ちはだかる本作。それぞれがそれぞれの理由で殺人を犯し、隠蔽するために用いるトリックや古畑との対決も見どころのひとつだ。

 犯人たちのトリックを古畑は次々と見破っていくが、時にはそうそうすんなりといかないことも多い。そのため、これでは犯人を逮捕できないのでは……とハラハラしてしまう場面もある。中には、古畑を悩ませるくらいに手ごわい、“最強の犯人”と呼ぶにふさわしい犯人も登場した。

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます 

■古畑に「完璧」とまで言わせた犯人

 作中で最も古畑を苦しめた犯人としてよく挙げられるのが、「今、甦る死」の回に登場する犯人だ。この事件は、藤原竜也さん演じる堀部音弥が、兄の堀部大吉を殺害することから始まる。

 音弥は犯行を偽装するため、雪道に足跡を残さないよう竹馬を使ったり、角砂糖を利用して荷物を狙った時間に落とす仕掛けをしたりした。しかし、その全てを古畑に見破られてしまう。

 圧倒的に不利な状況となった彼に助言を与えたのが、石坂浩二さん演じる郷土資料館館長・天馬恭介だ。彼は音弥に自作自演で怪我をするよう仕向けた。わざと被害者になることで、音弥が容疑者候補から外れるという思惑だ。

 音弥はその提案に乗ったせいで、銃の暴発によって死んでしまう……。こうして犯人が死亡という結末で終わるかに思われたが、ここで衝撃の事実が明かされる。なんと、音弥が大吉を殺すように仕向けたのは天馬だったのだ。そして、音弥を暴発で死なせたのも意図的なものだった。

 実は天馬は15年前に音弥たちの父親・堀部育三を殺害し、山に埋めていた。大吉がその山を売るという話をしたので、死体が掘り起こされるのを恐れ、音弥をけしかけたのである。天馬は自らの手を一切汚さず、大吉と音弥を葬り去ってしまった。あくまでも誘導しただけなので、この2件がバレたところで天馬を殺人犯として捕まえることもできない。

 ここまではまさに完璧。しかし、裏山が怪しいとにらんだ古畑は山を掘り返すことにする。それでようやく天馬は観念した。育三を殺害した凶器を残していたので、もはや言い逃れもできなかった。

 古畑はこの事件について、「これほど完璧な殺人の計画を私は知りません」とまで言っている。それほど天馬は用意周到で抜け目のない強敵だったのだ。

■最後まで古畑が尊敬の念を抱いた犯人

 次に紹介したいのが、野球選手のイチローさんが登場した「フェアな殺人者」の回だ。イチローさんが『古畑任三郎』のファンということで実現した共演だが……まさか、あれほど見事な演技を見せてくれるとは思わなかった。

 作中でイチローさんが演じるのは、「プロ野球選手・イチロー」。つまり本人役というわけだ。イチローは異母兄である向島がフリーライターの郡山繁に脅されていると知り、郡山の殺害を計画する。

 その手口は、毒入りと無毒のカプセル2つを用意して郡山に片方を飲ませ、残りを自分も飲むというもの。そこには何のトリックもなく、純粋な2分の1の確率勝負だ。イチローは殺人でもフェアな勝負がしたかったのだ。そして郡山はこの賭けに負け、死亡してしまう。

 その後、現場で捜査をしていた古畑は、郡山が死ぬ直前に売店で購入した野球ボールが無くなっていることに気付く。これは事件の直前、イチローが郡山に頼まれてサインしたもの。そのボールは地下駐車場の上部にある排水管のあたりで発見された。

 もちろん、そんなところに投げるのは普通の人間にはまず無理だ。そこからもイチローがこの場にいたのでは? と古畑は疑うことになる。

 しかし、イチローが疑われると、彼をかばおうとした向島が郡山を殺したと自供。焦ったイチローはボールに自らサインしたことを明かしてしまい、罪を認めざるをえなくなった。

 最後まで堂々としていたイチローには、古畑も終始敬意を払っているように見えた。イチローのほうも古畑を「最高の対戦相手」と評しているので、こんな形といえどお互い認め合う良いライバル関係といえるだろう。

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