■悲惨な人生の果てに幸せをつかんだ『Fate/stay night』間桐桜
最後に紹介したいのが、『Fate/stay night』に登場する間桐桜だ。本作にはさまざまなルートが存在し、そのうちの「Heaven‘s Feel」が彼女がハッピーエンドを迎えるルートにあたる。
桜の場合、わかりやすくヤンデレ的な行動を見せるというよりは、「いい子」の仮面の裏に崩壊寸前の人格を抱えているタイプだ。その原因は、彼女が生まれ育った悲惨な環境にある。
桜はもともとは魔術師の名門・遠坂家の次女だったにもかかわらず、後継者に恵まれない間桐家へと養子に出されてしまった。これが彼女にとっての地獄の始まりで、長年にわたって間桐家で惨い扱いをされたせいで心身ともにボロボロに……。そんな中で唯一の安らぎとなっていたのが、先輩である衛宮士郎と過ごす時間だった。
桜にとって士郎は心の拠り所であり、何より大切な存在だ。できることなら自分のものにしたい、でも自分なんかが幸せになれるはずもない……と諦めていた。そんな内に秘めた想いを抱いたまま聖杯戦争が始まると、彼女はついにすべてを解放する。
大聖杯内に存在する「この世全ての悪」の影響を受け、これまで抑圧されていたものが爆発。無意識の中で大量殺人を行ってしまう……。サーヴァントもその例外ではなく、最強のサーヴァントであるギルガメッシュすら簡単に飲み込んでしまっていた。
自らのドス黒い欲望の暴走を知った桜は、このまま飲み込まれていいのか、踏みとどまるべきかで葛藤する。そんな彼女を止めてくれたうちのひとりが士郎で、自身の肉体が崩壊寸前の状態になっても決して桜を見捨てなかった。おかげで桜は自我を保つことができ、完全に悪に飲み込まれずに済んだ。
そして、士郎はそのまま死んでしまったかのように思われたが、魂だけはどうにか現世に残される。その魂を人形に定着させることで、士郎は復活。こうして桜は彼や姉である遠坂凛たちとの幸せな日常を手に入れる……。
桜のこれまでの人生はあまりにも不幸すぎた。だからこそ、最後に大好きな士郎と結ばれて良かったと心から思う。
ヤンデレキャラはどこかで愛の形が歪んでしまい、行き過ぎた行動を取ってしまいがちだ。しかし、それも何かのきっかけで目が覚め、行動をあらためる場合もある。たとえ形は間違っていても一途な想いを向けていた彼女たちが、想い人ときちんと結ばれる結末には、どこかぐっとくるものがある。


