■ピノコが愛しているのはブラック・ジャックただ1人! 最終的に2人はどうなった!?

 ブラック・ジャックの手によって命を与えられたピノコは、生まれた当初から彼を一途に愛し、ことあるごとに“先生のお嫁さんになる!”と宣言している。

 しかし、見た目が幼稚園児ほどのピノコがブラック・ジャックと結ばれることはなく、ブラック・ジャックもまたピノコを娘のように扱い、一時は幼稚園に通わせるなど、女性というよりは子どものように扱っている。2人はずっと、親子のような、あるいはある種のパートナーのような関係で物語を歩んでいく。

 だが、もしもピノコが成人女性として成長したならば、ブラック・ジャックと結ばれる可能性もなくはないだろう。それが示唆されているストーリーが2つある。

 1つは、前述の「ピノコ生きてる」の回。姉の助けで九死に一生を得たピノコは、麻酔で眠る中、夢を見る。それは大人になった自分が「先生愛ちてゆ…」と、ブラック・ジャックに寄り添うという内容だ。

 また「人生という名のSL」のエピソードでは、今度はブラック・ジャック自身が夢を見る。その夢の最後に登場するのが、21歳となり、8頭身になった美しいピノコである。

 夢の中でもブラック・ジャックに愛を伝えるピノコに対し、“見かけの姿なんて興味がない”と、突き放すブラック・ジャック。しかしその後、彼はピノコに対し「おまえ私の奥さんじゃないか」「それも 最高の妻じゃないか」という言葉をかけるのだ。

 これらのエピソードはいずれも夢オチで終わっているが、もしピノコが女性として成長したら、2人の未来はこうなるのではないか? と、読者に期待を抱かせる。

 天才外科医として世界に名を馳せながらも、心に深い孤独や生きづらさを抱えるブラック・ジャック。そんな彼を支えていくのは、やはりいつも元気を与えてくれるピノコしかいないだろう。

 

 『ブラック・ジャック』は、連載開始から50年以上経つが、いまだに人気の衰えない不朽の名作だ。その魅力のひとつに、ピノコの存在はなくてはならないだろう。

 ブラック・ジャックのクールでシリアスな雰囲気と、ピノコの天真爛漫な愛らしさ。この対照的な2人の関係性は、時代を超えて多くの読者を魅了し続けているのである。

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