
長きにわたって愛されている『ガンダム』シリーズ。アムロ・レイやキラ・ヤマトなど、特に優れた操縦技術でファンを魅了した主人公パイロットの活躍がある一方で、出番が少ないながらも爪痕を残した名もなきモブパイロットも存在する。
その中にはエース級の技量を持つパイロットも含まれ、圧巻の操縦技術から生み出された衝撃の戦闘シーンは多くのファンを魅了した。
有名なところでは『機動戦士ガンダムUC』の第1話に登場したスターク・ジェガンでクシャトリヤに挑んだロンド・ベル隊のパイロットなどが挙げられる。
そのような、わずかな出番でガンダム史に伝説を残した無名のパイロットたちによる壮絶な戦闘シーンを振り返ってみよう。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■砲撃機の鈍重なイメージを覆した名もなきパイロット
PS3用ゲームソフト『機動戦士ガンダム戦記』(バンダイ)の初回特典として制作された短編アニメーション『機動戦士ガンダム戦記 アバンタイトル』には、1機のガンキャノンが登場する。
舞台は宇宙世紀0079年12月31日、ア・バオア・クーでの最終決戦。特典映像はジオン公国軍のエリク・ブランケと、地球連邦軍のユーグ・クーロそれぞれの視点で描かれている。
その戦いの中で、胸に「203」と刻まれたガンキャノンが登場。その数字からカイ・シデン(108号機)やハヤト・コバヤシ(109号機)のものではない、別のパイロットが乗った機体だと分かる。
そのガンキャノンは、エリクの乗るゲルググに頭部バルカンを斉射しながら猛突進。一気に距離を詰めると、ゲルググのビームライフルを巧みに避けながら、シールドを踏み台にしてジャンプするという離れ技を見せる。
そして間髪入れずに急襲したザクIIのマシンガンを回避し、ビームライフル1発で撃破。この鮮やかな動きにエリクは「キャノンであのスピードなのか!」と驚愕していた。
わずか5秒ほどの戦闘シーンだが、そのスピード感と安定感のある戦いぶりから、パイロットのすさまじい操縦技術が感じられる。ガンキャノンに乗ったパイロットの姿はまったく描かれておらず、完全なモブキャラではあるが、鈍重な砲撃機というガンキャノンのイメージを一変させる圧巻の戦闘シーンだった。
■息のあった連携攻撃で有名機体を撃破
『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』には、オーブ軍が開発した量産型可変モビルスーツ、ムラサメが登場。そのムラサメの小隊は、ベルリン侵攻作戦にてカガリ・ユラ・アスハのストライクルージュとともに出撃し、ネオ・ロアノークと戦うキラのフリーダムガンダムを援護する。
ムラサメ小隊は3機編隊でスティング・オークレーが操縦するカオスガンダムを翻弄、上空から滑空しながらビームによる波状攻撃を仕掛ける。
高速で接近しながら放たれたムラサメ小隊の厚い弾幕を避け切れず、被弾したカオスガンダムは落下。その隙を見逃すことなく、すかさずモビルスーツ形態に変形したムラサメは、ビームサーベルでカオスガンダムの胴体を斬り裂いて撃墜した。
可変モビルスーツの特性と小隊による息のあった連携を生かした、見事な戦い方を披露したといえるだろう。
残念ながら彼らの活躍は、同時進行していたキラとネオ・ロアノークの激闘、そしてシンとステラが展開していた人間ドラマの前にかすみがちだ。しかし、量産機でカオスガンダムを仕留めた功績はもっと評価されてもいい。
ちなみに、このムラサメ小隊の3名のパイロットには、一応イケヤ、ゴウ、ニシザワという名前がある。そのため完全なモブキャラというわけではないが、フルネームも分からないパイロットが量産機でガンダムを撃墜したのだから、紛れもなく大金星である。