
9月7日、令和『仮面ライダー』シリーズ第7作目となる新番組『仮面ライダーゼッツ』(テレビ朝日系)がスタート。SNSでは世界トレンド1位を果たすなど、国内外のファンを瞬く間に魅了した。「世界同時配信」に「胸ベルトの採用」など、前例のない挑戦と斬新な表現が盛り込まれた第1話。まさに、シリーズに新しい風を吹き込む展開となった。
今回は、その第1話を振り返りつつ、本作の注目ポイントを整理してみたい。
※本記事は作品の内容を含みます。
■「夢」を軸に描かれる物語
『仮面ライダーゼッツ』の物語の核となるキーワードは「夢」である。
今井竜太郎さんが演じる主人公・万津莫(よろずばく)は、強い正義感を持ちながらも、人助けをするとなぜか不幸に見舞われるという“不運体質”の持ち主。第1話では、誘拐された子どもを助けようとして無人の車に轢かれてしまうなど、その特殊な体質が象徴的に描かれていた。
しかし、舞台が夢の世界へと移ると状況は一変する。莫は夢を自在に操る“明晰夢”の力で、華麗なアクションを次々と繰り広げる。まさに理想のヒーロー像そのものであり、ついには仮面ライダーゼッツへと変身を遂げる。現実では不運に翻弄される一方、夢の中では悪と戦うヒーローとなる。このコントラストこそ、本作の世界観を象徴する要素だろう。
さらに第1話のエンディングでは、白服をまとった謎の男・ノクス(古川雄輝さん)が「夢が眠るとき、世界が悪夢に目覚める」という意味深な言葉を残す。現実と夢が交錯する舞台で、この警告がどのような意味を持つのか、視聴者の想像力をかき立てる。
■「世界同時配信」という挑戦
本作は、アジア各国やアメリカなどでの“世界同時配信”がシリーズで初めて行われることも放送開始前から注目を集めていた。
『仮面ライダー』シリーズは、タイや中国をはじめとするアジア圏での人気が高く、欧米でもデジタル配信や映画上映を通じて徐々にファン層を拡大している。それが今回の同時配信により、初回放送から世界中のファンたちとリアルタイムで視聴体験を共有できるようになったのだ。
そのため、作品作りの随所に“世界”を意識した演出が光る。まずは、ナイト撮影で彩られたオープニング。莫が華麗なエージェントアクションを披露し、クールでスタイリッシュな演出で視聴者を一気に世界観へ引き込む。
さらに変身後の仮面ライダーゼッツは、仮面ライダー1号を思わせる緑と黒を基調に、赤い蛍光ラインが走る筋肉質なシルエット。近年主流のアーマータイプとは一線を画し、装甲がない肉体の力強さを前面に押し出したデザインだ。伝統と革新が巧みに融合され、見る者に新鮮な印象を与えている。
このグローバルな視聴体験を通じて、日本発の特撮ヒーローが今後どのように世界に語られていくのか。『ゼッツ』の挑戦は、早くも大きな期待を呼んでいる。