■シリーズ初の胸ベルト「ゼッツドライバー」

 本作最大のサプライズは、やはり「胸ベルト」の導入だろう。1号以来、仮面ライダーの象徴ともいえる変身ベルトは腰に装着するのが定番だった。だが『ゼッツ』では胸部に「ゼッツドライバー」を装着するという大胆なデザインを採用。長年のイメージを覆すデザインは放送直後から「斬新」「インパクト抜群」と大きな話題を呼んだ。

 莫は夢の世界で怪人ナイトメアに襲われる最中、謎めいた「司令官ゼロ」と呼ばれる男から「Make your dream come true(さあ夢を叶えるんだ)」と告げられ、ゼッツドライバーを託される。カプセル型アイテム「カプセム」をベルトに装填すると装置が発光し、莫は唇をなぞって指を弾く独特のポーズから、カプセムを回転させて変身を遂げる。

 戦闘シーンも圧巻だ。地面をじゅうたんのように引き寄せ敵を転倒させる演出や、投げ飛ばした敵が滝や火山、雷に飲み込まれる様子など、夢ならではのダイナミックさ。そこに肉弾戦主体のリアルファイトのシンプルなカッコよさが融合し、迫力満点の戦闘を生み出している。

 さらに第1話のエンディングでは、夢の中で装着したはずのゼッツドライバーが、なぜか目覚めた現実でも莫の胸に残っている描写があった。ゼッツドライバーは単なる変身アイテムに留まらず、物語の核心に深く関わる存在として、今後の展開でも大きな注目を集めそうだ。

 

 このように『仮面ライダーゼッツ』第1話は、シリーズ史上初の試みが連続し、視聴者に強烈な印象を残した。現実と夢を行き来する独自の世界観は、物語の行く末を大きく揺さぶる要素となりそうだ。

 意味深な言葉を残したノクス、ゼッツドライバーを託した謎の司令官ゼロ、夢に現れた人気タレント・ねむ(堀口真帆さん)。さらに、ナイトメア事件「ブラックケース」を追う公安刑事コンビの富士見鉄也(三嶋健太さん)&南雲なすか(小貫莉奈さん)、莫の妹・美浪(八木美樹さん)といったキャラクターたちも登場。まだ物語は始まったばかりだが、それぞれの存在が物語にどう絡んでいくのか、次回以降の展開も気になる。

 新たな挑戦と原点回帰を融合させた『ゼッツ』は、今後の展開からも目が離せないシリーズとなりそうだ。

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