■意外に血の気が多かったバッハ
「音楽の父」として知られるヨハン・セバスティアン・バッハも、イメージと違うという点では先の2人に負けていない。
バッハの音楽といえば、がっちりとした構成や重厚な音の重なりから「マジメ」というイメージを抱く人も多いかもしれない。実際、彼は生涯を通して教会付きの音楽家として働き、勤勉に仕事をこなしてきた。つまり、人物像としてもお堅い印象がある。
しかしその一方、特に若い頃は破天荒で血気盛んな一面も持っており、いくつかの面白い逸話が残されている。
敬愛するオルガニスト、ディートリヒ・ブクステフーデの演奏を聴くためだけに片道3日以上歩いて現地に赴いたり、その演奏に感銘を受けた結果、4週間の休暇を無断で4倍ほどに伸ばし教会からお叱りを受けたり……。それだけならまだ可愛いレベルだが、ラテン語学校の合唱隊を指導していた頃には、なんと生徒と乱闘騒ぎになったこともあった。
しかも発端は、バッハがとある生徒のファゴットの腕前を侮辱したこと。激怒した生徒が道端でバッハに襲いかかり、バッハはなんと携えていたナイフを抜いて応戦したという。制止する者がいたおかげで大事には至らなかったが、当然、大問題にはなった。
また、バッハは雇い主である領主の怒りを買った結果、なんと投獄されてしまったこともある。それだけでもビックリだが、牢獄の中でも作曲をしていたというのだから、その肝の据わり方には尊敬の念すら感じてしまう。
今回取り上げたのはほんの一握りであり、その他の作曲家にもとんでもないエピソードの持ち主は数多くいる。そうした逸話を通して“意外な素顔”を知ることで、どこか遠い存在に思える“クラシック音楽家”たちが身近に感じられるかもしれない。
ベートーヴェンの素顔が赤裸々に描かれる『ベートーヴェン捏造』、この機会にぜひチェックしてみてはいかがだろうか。