■シャアもエゥーゴも裏切った危険を好む女性兵士
テレビアニメ『機動戦士Zガンダム』に登場した「レコア・ロンド」も、シャア(クワトロ)とは深い関係にあった人物だ。シャアが彼女の私室を訪れたり、キスをする場面が描かれたりと、アーガマのクルーの間でも公認の仲だったようだ。
なお富野由悠季氏も雑誌のインタビューで、シャアとレコアの間に体の関係があったことを認めている。
一時は情緒不安定なレコアをシャアが気にかけるような場面もあったが、彼をかばって負傷したときに見舞ってももらえず、彼女は次第に孤独と絶望の感情を募らせていく。
そんなレコアは、ファに「自分がギリギリのところにいないと、生きている気がしない」と胸の内を語り、自室に戻った際は「誰の帰りも待っていない部屋だわ、ここは」とつぶやいている。
負傷が癒えぬまま出撃しようとしたレコアをシャアが引き留めるが、彼女は「あなたは、私を止められるだけのことをしてくださいました?」と突き放す。
その戦いのなかでレコアはティターンズに拉致され、自分のことを認めてくれるパプテマス・シロッコに従い、エゥーゴやシャアを裏切って寝返ることになる。
一方、アーガマのクルーたちは、レコアが戦死したと思い込んでいた。カミーユは、レコアの部屋で消沈しているシャアの顔面を殴りつけ、「あなたがもう少しレコアさんに優しくしていたら、あんなことにはならなかったんです」と怒りをぶつけた。
その頃のシャアはエゥーゴの幹部として難しい立場にあり、レコアのことを気遣う余裕がなかったのは事実だろう。しかし劇中の描写から察するに、彼にレコアへの気持ちがなかったわけでもなさそうだ。
逆にレコアは、ファに語ったように自らを危険にさらすことで生の充足を得るという危うい感性を持っていた。シャアとの恋愛も、無償の愛というよりは自分の価値の証明を求めているようにも見える。
なお、ティターンズに寝返った後のレコアは、「アーガマの男たちは自分のことしか考えていなかった」「今の私は女として、とても充足しているの。安定しているのよ」と、これまでの不満を爆発させていたのが何とも切ない……。
『ガンダム』シリーズでも屈指のモテ男であるシャア・アズナブルの女性遍歴をあらためて振り返ってみた。こうしてみると、シャアと関係のあった大半の女性が不幸になっている。
ちなみに『ジークアクス』の世界線のシャアだけは、その世界のララァとハッピーエンドを迎えたらしき描写があったのが唯一の救いかもしれない。