
『ガンダム』シリーズにおける「モテ男」といえば、“赤い彗星”ことシャア・アズナブルを思い浮かべるファンも多いのではないだろうか。
金髪碧眼で端正なルックス。実はジオン共和国の創始者の血を引き、パイロットとしても優秀で、人を惹きつけるカリスマ性まで持っている。そんな何拍子もそろった人物なのだから、モテて当然なのかもしれない。
初代『機動戦士ガンダム』では、ニュータイプの少女「ララァ・スン」との親密な関係が描かれ、彼女はシャアをかばって命を落としている。のちにシャアは、ララァについて「私の母になってくれるかもしれなかった女性だ」と発言していた。
テレビアニメの最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』ではパラレルな世界観とはいえ、シャアに対するララァの想いの強さが描かれたことも記憶に新しい。
そしてもうひとり、シャアとの親密な関係が描かれたのが、劇場版『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』に登場した「ナナイ・ミゲル」である。彼女は新生ネオ・ジオンの総帥となったシャアを公私にわたって、よく補佐していた。
そこで今回は、映像作品ではそこまで掘り下げられなかったシャアの、気になる女性遍歴を振り返ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■希代の女傑が少女時代に恋をした?
テレビアニメ『機動戦士Zガンダム』や『機動戦士ガンダムZZ』に登場したアクシズの指導者「ハマーン・カーン」。彼女はクワトロ・バジーナを名乗るシャアと対峙しながら、彼に固執する様子がたびたび描かれている。
そしてグリプス戦役の最終決戦でシャアの乗る機体が爆発に巻き込まれた際、ハマーンは「シャア……私と来てくれれば……」と未練めいたセリフをこぼしていた(結局、彼は生存していたが)。
敵陣営にいながら、なぜハマーンはそこまでシャアに固執したのか。そのワケは、グリプス戦役前にシャアがアクシズにいた頃を描いたコミック『機動戦士ガンダムC.D.A. 若き彗星の肖像』(KADOKAWA)の中で具体的に語られている。
まだ10代半ばの少女だったハマーンは、父マハラジャ・カーンの考えに共感するシャアに憧れを抱く。アクシズで同じ時を過ごし、任務によっては婚約者を演じることもあったシャアに対し、憧れの感情は次第に恋心へと変わっていくのである。
しかしシャアのほうは、ハマーンの世話役でもあった女性兵士と恋仲になるため、ハマーンの片思いである。そのあたりの感情のすれ違いがきっかけに起こった悲惨な事件のあと、シャアはアクシズを去ってしまうのだ。
シャアの視点では、それはハマーンとの決別を意味したが、『Zガンダム』での彼女の言動の端々から彼に対する特別な感情が感じられたのは、そういう経緯があってのことだった。
■シャアともっとも深い関係になった女性?
北爪宏幸氏によるコミック『機動戦士ガンダムC.D.A. 若き彗星の肖像』でハマーンの世話役を務め、シャアと恋仲になった女性が「ナタリー・ビアンキ」だ。
軍に属するナタリーは、アクシズ配属後にハマーンと姉妹のような関係を築くことになる。そして彼女自身も憧れていたシャアと仕事を通じて親しくなっていくが、彼女は恩義のある上官から、シャアをジオン残党の強硬派に引き入れるよう命じられていた。
それからハマーンと同様にシャアに対して恋心を抱くようになったナタリーは、上官からの指示と板挟みになる。
だが、その葛藤をシャアに見抜かれ、ナタリーは本当の想いを告げたところ、シャアもそれを受け入れて恋仲となるのだ。
さらにその後、ナタリーはシャアの子どもを身ごもった。彼とともに幸せに生きるため、迷いながらもハマーンにシャアとの関係を告げるナタリー。しかし、それを知ったハマーンは激怒するのである。
その直後ナタリーは裏切り者として強硬派の連中に狙われ、ハマーンはその暗殺者の存在に気がつきながらも彼女を見殺しにする選択をとった。
結局ナタリーは、子を宿したことをシャアに告げずに命を落とす。彼女の死を知ったシャアは深く悲しみ、ハマーンを責めることはなかったが、ふたりの関係は断絶。この一件がアクシズを離れる契機となったのである。
コミックのオリジナル展開なので正史と呼べるかは微妙だが、シャアの子まで宿した女性がアクシズにいたことは知っておいて損はないだろう。