■犯人を捕まえられなかった「すべて閣下の仕業」

 最後は犯人を捕まえられなかった「すべて閣下の仕業」を紹介する。この事件は古畑がサルにパスポートを取られてしまい、中南米某国の大使館にやってきた際に起こったものだ。

 松本幸四郎(現:松本白鸚)さんが演じる大使の黛竹千代は、自らの悪事をバラそうとした参事官・川北健を殺害してしまう。そして川北がテロリストに誘拐されたことにして、スペイン語の脅迫状などを用意し、全ての罪を現地の使用人・ガルベスになすりつけたのだ。

 しかし、付着していたパクチーから川北の死体を冷蔵庫に隠していたことがバレたり、ガルベスが実は日本人でまったくスペイン語ができないと判明したりしたせいで、黛は追い詰められる。

 観念してそのまま逮捕されるのかと思われたが、黛はまさかの行動に出る。忍ばせてあった拳銃を取り出し、自ら命を絶ってしまったのである。

 プライドの高い人間だった黛は、捕まって恥を晒すくらいなら死んだほうがマシだと考えたようだ。まさか犯人がいきなり自死を選ぶなど予想も付かず、止められなかった古畑はショックを隠せていなかった。

 そのため犯人逮捕という結末にはならず、苦い記憶だけが残る事件となってしまった……。

 

 『古畑任三郎』シリーズの事件は、視聴者を楽しませるための工夫が数多くされている。そしてストーリーそのものはもちろん、犯人役の俳優の演技も見どころのひとつだ。

 今回紹介した事件以外にも少し変わった事件がまだあるので、興味のある人は見てみてはいかがだろうか。

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