
すべての原点であるテレビアニメ『機動戦士ガンダム』の放送開始から46年が経過。その後さまざまなシリーズ作品が生まれ、物語を彩るモビルスーツ(MS)も多種多様なバリエーションが登場した。
いかにも装甲の厚そうな機体や機動力のありそうな機体など、一目で分かる秀逸なメカデザインに感心させられることは少なくない。
しかし、その中にはパッと見の印象とは異なる特性を有しているMSも存在する。「鈍重そうに見えて素早い」「ガンダムタイプに見えて中身は違う」など、ときには視聴者を困惑させることもあった。
そこで今回は歴代の『ガンダム』シリーズに登場した、ビジュアル面の印象と実際の性能が異なっていた特殊な機体をピックアップして振り返ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■木星帰りの天才が生み出した「最高傑作」
テレビアニメ『機動戦士Zガンダム』で実質的なラスボスのような立ち位置だったのが、パプテマス・シロッコ。優れたニュータイプであり、指揮官として多くの人を率いるカリスマ性の持ち主。それに加えて素晴らしいMSやMAを開発する技能まで有した、紛れもない天才である。
自らの手で優秀な機体を多数生み出したシロッコは、自身が搭乗する専用機「ジ・O」も開発する。
いかにも鈍重そうな分厚い装甲に包まれ、MSとしては大型の全高28.4mの巨体は圧倒的なパワーと耐久性を兼ね備えているように見える。そのビジュアルから多彩な重火器による圧倒的な火力と、高い防御性能による鉄壁の守りを主体に戦う、モビルアーマー(MA)のような機体だと思った人も多いはずだ。
しかし、ジ・Oの特徴や戦い方はイメージとまったく違った。全身に50基も備えたアポジモーターを高出力のジェネレーターで稼働させ、Zガンダムを上回るスラスター総推力がある。さらに、シロッコが独自に開発したバイオセンサーまで搭載しており、鈍重どころか桁外れの機動力と反応速度を誇っている。
しかもバイオセンサーという簡易サイコミュを搭載しながら、お得意の可変機構やサイコミュ兵器は持たない。主武装はビームライフルと2本のビームソードのみというシンプルさで、持ち前の機動力を活かした近接戦に特化した機体だったのである。
またジ・Oには秘められた隠し玉があり、それが腰部フロントアーマーの下に存在する「隠し腕」と呼ばれるサブマニピュレーターだ。これにビームソードを持たせての攻撃は、予想するのが困難な奇襲となる。
重そうなビジュアルとは裏腹に、機動性をとことん突きつめたMSであり、シロッコはこの機体でハマーンのキュベレイが放つサイコミュ兵器「ファンネル」の動きにも対応。可変機であるZガンダムとも互角以上に渡り合った。
■「ガンダム」の名を持ちながら、その実体は……!?
当時のアニメ作品には登場しなかったが、一年戦争時に存在したメカニックデザイン企画「モビルスーツバリエーション(MSV)」から生まれた機体たちも興味深い。
その中にはジオン公国軍の水陸両用MSに対抗するために開発された、連邦の水中用MS「アクア・ジム」が存在。さらにその上位機種として、「水中型ガンダム」が設計された。
ブルーを基調としたガンダムに似たフェイスを持つ水中機であり、そのビジュアルはガンダムタイプそのもの。これを見て、ガンダムのバリエーションと思った人も多いことだろう。
しかし実際はジムがベースとなったアクア・ジムをエースパイロット向きに再設計した機体にすぎず、あくまでガンダム風のフェイスを持つジムなのである。
ゲーム『機動戦士ガンダム バトルオペレーション2』(バンダイナムコエンターテインメント)の水中型ガンダムの解説によれば、アクア・ジムからジェネレーターや機動性、武装面と全面的に強化されているという。
その水中型ガンダムは、白石琴似氏によるコミック『機動戦士ガンダムUC 『袖付き』の機付長は詩詠う』(KADOKAWA)に登場。10年以上のあとに開発された最新型の「ゼーズール」と交戦。最終的に撃破されるものの、途中までは互角の実力を披露しており、中身はジムとはいえ決して性能は低くなかった。