■最凶の魔改造ガンダム

 太田垣康男氏によるコミック『機動戦士ガンダム サンダーボルト』(小学館)には、「パーフェクト・ガンダム」という機体が登場する。

 往年のガンダムファンなら、その名を聞いて、クラフト団とやまと虹一氏によるマンガ『プラモ狂死郎』(講談社)に描かれた強化版ガンダム「パーフェクトガンダム」を思い出すかもしれないが、それとはまるで別物である。

 『サンダーボルト』のパーフェクト・ガンダムは、見た目こそガンダムながら、その中身は「サイコ・ザクMk-II」という、いわば魔改造機体である。

 四肢を失ったパイロットの義手、義足を通じてMSの操作を可能にする技術「リユース・P(サイコ)・デバイス」を搭載したサイコ・ザクに、ガンダムの装甲とスラスターを組み合わせた機体なのだ。

 しかも脚部にはザクの特徴である動力パイプが露出しており、ザクのモノアイにガンダムヘッドを被せるという力技。メインカメラの起動音もザクでおなじみの「グポン」という音で表現され、ガンダムを知っている人ほど違和感を覚える機体となっている。

 この機体に乗ったのはジオンのパイロット「ダリル・ローレンツ」。ようするにパーフェクト・ガンダムは地球連邦軍の宇宙基地「ルナツー」に侵入するための偽装機体だった。

 この機体に乗ったダリルはルナツーを単騎で強襲。守備隊を圧倒し、鹵獲されていたニュータイプ専用モビルアーマー「ブラウ・ブロ」を奪還してみせた。

 なお、ブラウ・ブロを外部ユニットとしてドッキングした「パーフェクト・ガンダム」と、連邦軍に鹵獲されて改造が施された「パーフェクト・ジオング」の戦いは、陣営のチグハグさも相まって見ものだった。


 今回は、『ガンダム』シリーズにおける見た目と実際の性能や中身が異なっていた異色の機体を振り返ってみた。それぞれ方向性は違えど、その尖った個性はガンダム好きの心を惹きつける。こういった「異端児」とも呼べるメカが生まれるのも、ガンダム作品ならではの魅力といえるだろう。

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