■物語は感動のクライマックスへ

 そして、物語は最終話「さらば愛しき者たちよ…そして荒野へ…」に移る。リンはいつも自分をあたたかく見守ってくれていたバットの愛に改めて気づく。リンとケンシロウを結びつけようとしたバットの目論見は外れてしまったが、ぼろぼろのバットはすでに死にゆく身である。彼は「死んでいく人間の最期の願い」として、リンとケンシロウの2人で幸せになってほしいと願った。

 ケンシロウはその願いを聞き入れ、バットに向かって「おまえの受けた傷はオレやリンのために負ったもの」「おまえの優しさの証だ!!」「おまえは すばらしい男だった!!」と告げる。バットはそれを受け、すべてが報われた気持ちで力尽きるのである。

 しかし、バットが命懸けでリンとケンシロウの幸せを守ったにもかかわらず、リンはバットの死と引き換えに自らだけが幸せになることに抵抗を覚える。彼女は同時に、自分が誰を愛すべきかを自覚し、バットの墓とともに一生を過ごすことを決意。ケンシロウはそれを受け入れ、「行くがいい」「オレの心はいつもおまえのそばにいる」と告げてリンと別れる。

 だがその後、リンがバットを手厚く葬ろうとした際、遺体に異変があることに気づく。なんとバットの心臓が動いていたのである。これはケンシロウが秘孔を突き、生命力を与えた結果だった。こうしてリンとバットは長い年月を経て、真に結ばれる時を迎えるのである。

 最後にケンシロウは、天に浮かぶユリアの幻に問いかける。「ユリア これでいいのだろう」――ユリアはこの問いに対し、静かに微笑む。そしてケンシロウは再び荒野へ旅立ち、今日も悪党を屠る救世主として描かれ、物語は幕を閉じるのである。

 

 戦闘と愛、復讐と救済、因縁と絆――すべてが凝縮されたこの最終回は、改めて振り返るとラオウ戦の衝撃に勝るとも劣らない深い余韻を読者に残すものであった。ぜひこの機会に、もう一度じっくり読み返してみてはいかがだろうか。

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