「クリア後、思い出すたび涙があふれた…」小島秀夫監督『デス・ストランディング2』が私の心を救った理由【宇内梨沙「ひねもすぬまりぬまりかな」】の画像
宇内梨沙

【連載】宇内梨沙「ひねもすぬまりぬまりかな」第6回

 

 『デス・ストランディング 2:ON THE BEACH』(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)をクリアしてから数週間。あまりの衝撃で、この作品の魅力をどう伝えればいいのか、ずっと頭を悩ませていました。

 終盤の血が沸き立つような展開や、思いもよらぬ真相に涙が止まらなくなった瞬間など、喜怒哀楽のあらゆる感情を味わえる極上のエンターテインメント体験。正直、饒舌に語り尽くしたい気持ちでいっぱいです。

 けれど、それをしてしまえば全てがネタバレとなり、これから遊ぶ人の体験を損なってしまう。私はネタバレを嫌うゲーマーのひとりだからこそ、このコラムでも核心部分に触れたくはありません。

 じゃあどうしようかと考えた末、内容には踏み込まず、発売からクリアまでの「私が過ごした時間」で得られた特別なゲーム体験についてお話しようと思います。『デススト2』がどんなゲームなのかは、このコラムを読もうとしてくれている時点で、ある程度はご存じでしょうから割愛します。

 読む価値のあるコラムになるかはわかりませんが、時代の空気に寄り添って記しておくことで、いずれ振り返ったときに「小島秀夫監督の作品は、またしても時代とシンクロしていたのか」と語れる証拠のひとつになるかもしれません。

 

 『デススト2』の発売日は2025年6月26日。もう2~3カ月前のことです。発売を記念して12の地域を巡るワールドツアーが開催され、小島監督は超ハードスケジュールの中、世界を飛び回っていました。

 そして発売日の6月26日、日本では「DEATH STRANDING WORLD STRAND TOUR 2」が行われ、幸せなことに私も司会として関わることができました。

 イベントには主人公・サムの日本語版の声を演じた津田健次郎さんに加え、ゲスト出演者として兎田ぺこらさん、押井守監督、星野源さんといった豪華ゲストが登場し、会場は大盛り上がり。制作秘話などじっくり話を聞くことができ、私自身も、帰宅してからプレイできるのが楽しみで仕方ありませんでした。

 家に帰ると、パッケージ版が届いており、すぐさま「PlayStation 5 Pro」に読み込ませて、インストール開始。『デススト』は孤独を味わうゲームでもありますが、今回は視聴者のみなさんと一緒に楽しみたいと思い、最初から最後までTwitchで配信しました。

 クリアまでのプレイ時間はおよそ50時間。

 発売日からスタートしたため、視聴者の皆さんも初見の方が多く、美しいグラフィックや壮大な世界観、序盤からの衝撃展開に一緒に驚き、感動しながら、毎日3時間ほどプレイしていました。

 その結果、あっという間にクリア……と思いきや、発売から1~2週間ほど経ったところで、私は突然『デススト2』をプレイできなくなりました。

 飽きたわけではなく、物語を進める元気が湧かなくなってしまったのです。

 

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