■唯一無二の激重感情がエモい
映画『国宝』の親友二人の関係性もすてきなのだが、『フォーゼ』の朔田と二郎も負けず劣らず素晴らしい。
二人はかつて拳法の稽古仲間だったが、朔田との才能の乖離に二郎は思い悩む。その結果、強さを求めて「人間をゾディアーツへと強制進化させるツール」に手を出し、昏睡状態になってしまう。朔田はそんな二郎を救うために「仮面ライダーメテオ」としてゾディアーツと戦う道を選ぶのだが、朔田の親友大好きっぷりが激重で、とてつもなくエモいのだ。
作中で、何度も二郎のベッド脇で「俺が必ずお前を救う」「もう一度笑顔を見せてくれ、そのためなら命を賭ける」とすすり泣き、容体が悪化すると「死なせないで」と医者に懇願する。さらに常日頃、二郎からもらった時計を大事に身につけたりもしている。「なにこれ、私の脳が作り出した幻影か?」と思うほど美しい景色である。
二郎も二郎で、うわごとで何度も朔田の名前を呼んだりして、まさに「BIG LOVE__ 」 。
しかも、二郎のために仲良くなりかけた仲間たちを裏切り、一度は主人公を死に追いやったりする(※詳しくは本編を見てほしい)。「裏切者」のレッテルを貼られても「二郎さえ助かれば」と茫然と呟く朔田が悲しく美しい。
命に代えても二郎を助けたい朔田は、主人公と仲間たちの絆を「甘いんだよ」「安い友情」と下に見るクセがある。きっと朔田からすると、友情とは唯一無二のとても重い感情なのだ。だからこそ、明るい主人公が、分け隔てなく与える「友情」を見下してしまうのだろう。
そんな朔田が周囲の優しさに触れて態度が軟化していき、主人公にほだされていく姿も必見。普通に感情移入して何度か涙してしまった。さまざまな美しい「友情」を味わえて、鑑賞後はなんだか心が満たされた。
■『フォーゼ』から大事なものを教えてもらった
映画『国宝』の香りを味わいたくて、『仮面ライダーフォーゼ』を初視聴してみたが、すっかり本作のファンになってしまった。今回は朔田と二郎に焦点を当てたが、主人公の如月弦太朗を演じる福士蒼汰も素晴らしい。ストーリーも爽やかでありながらも、ハラハラする展開も多くて夢中で見てしまった。
世の中にはいろいろな形の名作がある。『国宝』のような気高く高尚な名作もあれば、『フォーゼ』のような誰でも親しみやすい構成で大事なものを教えてくれる名作もある。
そんなことを改めて気づかせてくれた『国宝』と『フォーゼ』という二作品だった。どちらも未視聴の人は、人生で一度は見てほしい。