■強さを求め人外へ至った『仮面ライダー鎧武/ガイム』バロン
平成ライダーの中にも、闇落ちを遂げた2号ライダーは存在する。その代表例が『仮面ライダー鎧武』に登場するバロンだ。
変身者の駆紋戒斗は、主人公・葛葉紘汰 (仮面ライダー鎧武)のライバルとして登場する。彼は幼い頃に味わった絶望から、何よりも強さを渇望するようになる。その姿勢は時に冷酷に見えることもあったが、その根底には確固たる信念と、彼なりの正義が確かにあった。
物語後半、第43話「バロン 究極の変身!」で、戒斗は強さを求めるあまり、ついに闇落ちを迎える。
戦極凌馬が潜む病院で、彼の手によって命を奪われた高司舞の姿を目撃した戒斗は、怒りに燃えて戦極に挑む。しかし旧式のドライバーでは力及ばず、さらに自身の体は毒に蝕まれ、限界を迎えつつあった。絶望の淵に立たされた戒斗は、背後に実った「ヘルヘイムの果実」へと手を伸ばす。
「こいつを食ったら、一体どうなるか!?」己の命すら賭けて禁断の果実を口にした瞬間、戒斗は人外の存在である「ロード・バロン」へと変貌。圧倒的な力で戦極を蹂躙し、殴り飛ばされた戦極の身体が壁にめり込むシーンは、多くの視聴者の度肝を抜いた。
まさに「強さを求めすぎた果ての闇落ち」であり、戒斗はその後、人類そのものに戦い挑む道を選ぶことになった。
2号ライダーは常に主人公の「鏡像」であり、ときには支え合う仲間、そしてときには激しく対立するライバルでもあった。その存在が闇に落ちる瞬間こそ、物語全体を根底から揺るがすほどのインパクトを持つ特別な出来事となる。
こうした2号ライダーの「闇落ち展開」は、『仮面ライダー』シリーズならではの、緊張感と深みを持ったドラマを生み出してきたのだ。