クェス、アンドレイ、グエル…彼らはなぜ「親」を殺めてしまったのか?歴代『ガンダム』ワケアリ家族の「残酷すぎる結末」の画像
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』公式サイト「ノア家のアルバム」より (C)創通・サンライズ

 長い歴史を持つ『機動戦士ガンダム』シリーズでは、モビルスーツ(MS)同士の激しい戦闘描写だけでなく、戦争の残酷さや、キャラクター同士のすれ違いといった、心の葛藤も描かれてきた。

 なかでも、視聴者の心に深い傷跡を残したのが、親子の確執から命のやりとりにまで発展してしまう展開である。

 物語を俯瞰し、それぞれの事情を知っている視聴者だからこそ、やるせなさを感じてしまうその描写には、いかに戦争が残酷であるかを痛感させられる。

 今回は『ガンダム』シリーズに登場した各キャラクターたちが、いかにして実の親を殺めるに至ったのかを、その背景とともに振り返っていきたい。

※本記事には各作品の核心的な内容を含みます。

■家族愛さえあれば防げたかもしれない哀しき運命 

 映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』に登場したクェス・パラヤは13歳という年齢ながら、ニュータイプとしての高い素養を持っていた少女だ。

 彼女の父、アデナウアー・パラヤは地球連邦の高官であり、家庭を顧みない人物だったことは、ネオ・ジオンとの交渉の場にまで愛人を連れていったことからも察することができる。

 娘のことを気にかけている素振りを見せながら、愛人とクェスの関係の悪さにこれといった対応はとらずにいた。さらに、ふだんから周囲に横柄な態度を取りつつ、突発的なトラブルが発生したときは冷静さを失う小心者のアデナウアー。そんな父親を、娘のクェスは誰よりも嫌悪していた。

 家族愛に飢え、無意識に父性を欲していたクェスは、運命的に遭遇したシャア・アズナブルの思想と人間性に惹かれて、彼が率いるネオ・ジオンへと身を寄せることになる。

 ニュータイプパイロットとしての非凡な才能を高く評価されたクェスは、MSのヤクト・ドーガを与えられて初陣を飾る。実戦の空気にのまれながら興奮状態のクェスは、連邦軍のクラップ級巡洋艦を発見すると単独で攻撃をしかけた。

 「みんな、落ちちゃえー!」と言いながら放ったメガ・ガトリングガンは、クラップ級のブリッジを直撃。そして不運なことに、その艦に乗り合わせていたのはクェスの父であるアデナウアーだった。

 クラップ級を撃沈したクェスは「やった、やったよ!」と無邪気な声をあげ、気づかぬうちに彼女が嫌っていた父親の命を奪ったのである。

 その後ニュータイプであるクェスは、父親を殺したことを無意識のうちに感じ取ったのか「気持ちの悪さ」を訴えながらも、シャアの父性にすがるように戦場に身を投じていくのだった。

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