■『クロスゲーム』甲乙つけがたい2人の強打者! 東雄平と三島敬太郎
推定160キロを投げる“コウ”速ピッチャー・樹多村光が主人公の『クロスゲーム』(小学館)には、規格外の打者が2人いる。それが、光のチームメイト・東雄平と竜旺学院高校の4番・三島敬太郎だ。どちらも光を苦しめたスラッガーであるため、併せて紹介したい。
まず東は、星秀学園を甲子園へ導くためにスカウトされたバリバリのエリート選手だ。その打撃力は全国でもずば抜けており、光たちプレハブ組との練習試合では3打席連続ホームランを記録。続く4打席目では光の球威を前に想定外のファウルを打たされ、自ら三振を選ぶも、明確に抑えられたわけではない。のちに光たちにとって頼れる4番となってくれたのが幸いだ。
一方、三島は竜旺学院の4番として、星秀学園の前に何度も立ちはだかったライバルだ。東もその才能を認める強打者で、2年夏の地区大会決勝では絶好調の光からあっさり代打ホームランを放って勝利に貢献した。さらに、続く2年春の選抜でも全国制覇の立役者となり、名実ともに全国一の4番に登り詰めている。
残念ながら3年夏の地区大会決勝では覚醒した光の投球に抑えられ、最後は推定160キロのストレートを見逃し、屈辱の四球を選ばされた。だが、東と並ぶ才能の持ち主であることは疑いようもない。
作中では「東が鎧ごと叩き斬る剛剣なら、三島は斬られたことに気づかない名刀」と称されている両者。どちらが最強かは、甲乙つけがたいとしか言いようがない。
いずれもヒケをとらぬ超高校級スラッガーだが、強いて一人を選ぶとすれば、主人公が一度もまともに抑えられなかった東雄平にわずかながら分があるのではないだろうか。甲子園で試合をしないまま本編が終わってしまったが、もし描かれていれば、球史に残る活躍をしていそうだ。
とはいえ、実績を見れば、甲子園3発連続の橘英雄や全国制覇をした三島敬太郎に軍配が上がるし、秘められた才能まで考慮すれば、新田が上にも思える。また、今回は候補に挙げなかったが、連載中の『MIX』(小学館)に登場する赤井智仁も彼らに劣らぬスラッガーであるし、考えだすとキリがない。だが、こうして最強を考えるのは楽しいものだ。
悩んだ結果、筆者は東雄平を推すが、あなたにとっての「あだち充作品の最強スラッガー」は誰だろうか?