
歴史の長いガンダムシリーズには、さまざまなタイプの「悪女」と呼ばれるキャラクターが存在する。代表的な悪女の例として必ず名前が挙がるのが、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場したニナ・パープルトンと、『機動戦士Vガンダム』に登場したカテジナ・ルースではないだろうか。
この手の話題を語る際は「三大悪女」として扱われることが多いが、ニナ、カテジナに次ぐ三番目の悪女は、ファンの間でも意見が分かれやすい。
そこで今回はガンダム悪女界の2トップとして名高いニナ、カテジナに続く、第3の悪女候補をピックアップ。多くの視聴者をドン引きさせた彼女たちの悪行を振り返りながら、ガンダム三大悪女のラストピースを探ってみよう。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■無邪気な少女がとった直情的な行動による悲劇
ガンダムを代表する悪女といえば、名前が挙がりがちなのが、映画『機動戦士ガンダム逆襲のシャア』に登場したクェス・パラヤだ。
彼女はニュータイプとして優れた素質を持ち、相手の感情を読み取る能力がズバ抜けていた。それに加え、多感な時期の少女ということもあって感情の起伏が激しく、情緒不安定かつ、わがままな行動が目立った。
彼女は「人間関係をこじらせる天才」ともいえるような振る舞いが多く、敵・味方を問わず混乱に陥れ、お世辞にも好感度が高いキャラとはいえなかった。
ハサウェイ・ノアやギュネイ・ガスといった年相応の男性から好意を寄せられながらも、「父性」や「包容力」を求めてアムロ・レイやシャア・アズナブルといった年上の英雄たちに興味を向け、相手の迷惑を顧みず感情の赴くままに行動した。
その結果、シャアにその力だけを利用され、結果的に多くの不幸を生み出す結果となってしまう。
しかし作中のクェスは、まだ13歳の少女にすぎない。それに彼女の育った家庭環境は劣悪で、大人に甘えたがるファザコン気質になってしまったのはやむを得ない面もあるだろう。
だからこそ、悪女と言い切るにはパンチが足りず、その後さまざまな悪女が台頭するなかで「愛に恵まれなかった、かわいそうな少女」と同情的に見てしまう人も少なからずいるはずだ。
■ファンの間でも賛否が分かれる「こじらせ系女子」?
『機動戦士Zガンダム』と『機動戦士ガンダムZZ』に登場したハマーン・カーンも悪女候補に名前が挙がりやすい人物だ。『機動戦士ガンダムZZ』のハマーンは、ラスボス的な存在として君臨した。
まだ20代前半の女性でありながら、アクシズ、ネオ・ジオンの実質的指導者となった超エリート。そのうえカリスマ性があり、リーダーとして高い資質を持っていた。
そんな女傑のハマーンは、『機動戦士ガンダムZZ』で描かれた第一次ネオ・ジオン抗争の激動の中で非人道的な行為を行っていく。
地球連邦に対してネオ・ジオンの力を誇示する目的でアイルランドのダブリンにコロニー落としを敢行。彼女の主導により、地球上の無関係な民間人を含む、数多くの犠牲者を出した。
政治的な駆け引きがうまく、上に立つ者としての冷酷さと狡猾さを備えていたハマーン。しかし『機動戦士Zガンダム』での彼女の発言からは、かつて恋心を抱いたシャアに対する複雑な想いが見え隠れしていた。そのような私情を秘めながら指導者として軍を動かした、ある意味では宇宙規模の「こじらせ系」に見えなくもない。
もちろん、それに巻き込まれて被害に遭った側はたまったものではないが、そういうハマーンの人間らしい部分を好意的に見るファンも少なくない。時折見せる精神的な弱さや、ジュドーとの最終決戦での高潔な態度が印象に残っている人もいるだろう。
だからこそ彼女のことを悪の女傑と断じる者もいれば、「ハマーン様」と親しみを込めて呼ぶ者もいる。
そしてニュータイプのパイロットとしても超一流だったハマーン。彼女は単なる「悪女」なのか、それとも高潔な「悪のカリスマ」なのか。ガンダムファンの間でも意見が割れそうだ。