■ジャポニカ学習帳から昆虫が消えた本当の理由は?

 実は、前回のリニューアル時である2012年ごろから、ジャポニカ学習帳の表紙に昆虫の写真の掲載がなくなっている。これは当時、SNSや一部メディアで大きな話題となったが、ニュースでは憶測のみのセンセーショナルな表現で報じられたことも。中でも目立ったのが「保護者のクレームが原因で消えた」という説明だ。ただこれに関して、担当者は明確に否定する。

「もちろん、一部の保護者の方から、“昆虫が気持ち悪いから変えてほしい”というクレームがあったこと自体は事実です。ただ前回のリニューアル時に表紙に使えるいい昆虫の写真がなかったこともあり、それに伴って昆虫が表紙からいなくなった……というのが本当の経緯です。それが切り取られて報道されてしまいました。いろいろなご意見があったのは事実ですが、クレームのみが理由で変更したわけではないのです」

 長年ジャポニカ学習帳の表紙を務めてきた山口進さんが逝去してから2年。表紙がイラストに変更されるという大胆な改変が行われ、今後は表紙のイラストを裏表紙の写真で解説するスタイルに切り替わる。

 長らくシンボルだった緑の枠は教科別に色分けされ、カラフルなデザインへ進化。イラストはNHKEテレ『ノージーのひらめき工房』などでも知られる人気アーティストで絵本作家の「tupera tupera(ツペラ ツペラ)」が、全39種類を描き下ろしている。

「山口さんがこれまで撮ってくださった写真はたくさんあり、そのDNAは途絶えることはありません。イラストで想像を膨らませ、裏表紙の写真で解説する。これまで紡いできた意思と、今後広めていきたいことを総合勘案し、今回のリニューアルに至りました」

■企業オリジナル学習帳やグッズ展開も! ショウワノートが目指す新たな方向性

 なお、ショウワノートは教材用の学習帳だけでなく、企業と連携した「企業オリジナルの学習帳」にも力を入れている。その狙いとは?

「ジャポニカ学習帳が目指すのは、子どもたちの興味の入り口になること。自身の好奇心や創造を広げてほしいという願いがあります。ジャポニカ学習帳をお子様の工場見学や社会科見学と合わせることで、学びもより深くなる。非常に相性が良いんです」

 小学校時代、工場や会社の見学に行ったはいいものの、どのような会社だったのかよく覚えていない……という経験がある人もいるだろう。学習の機会を逃さないために、企業の写真や説明が入ったオリジナルの学習帳を制作し、社会科見学や工場見学に来た子どもたちに配布する企業も増えているという(※一般販売は無し)。

 また人口減少が進むなかで、学習帳市場の先行きを見据えた新たな柱づくりも進めている。そのうちの一つが、キャラクターブランド「POMMOP(ポンモップ)」だ。

「ショウワノートは小学校・低学年をターゲットにしたメーカーではありますが、人口減少で子どもは少なくなり、低学年のみをターゲットにするのでは先行きも怪しくなります。ショウワノートは版権をお預かりしているメーカーでもあり、子どもだけでなく、大人もターゲットに発信していこうということで、POMMOPというブランドを立ち上げました。学習帳をモチーフにしたグッズだけでなく、キャラクターモノの缶バッジやアクリルスタンド、ぬいぐるみなど幅広く展開しています」

 

 世代を超えて親しまれてきた「ジャポニカ学習帳」は、時代に合わせて大胆な表紙リニューアルを行い、それを通じて新たな一歩を踏み出した。また、さまざまな新しい取り組みにも挑戦し続けるショウワノートが、未来に向けてどのような商品を展開していくのか今後も注目される。
 

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