「ジャポニカ学習帳」おなじみの表紙から昆虫&花の写真が消える…55周年で「大幅リニューアル」のワケの画像
東京おもちゃショーに展示されたジャポニカ学習帳(ショウワノート)

 子ども用学習帳のトップブランドである『ジャポニカ学習帳』。1970年の発売以来、長年にわたりトップシェアを走り続け、表紙の昆虫や花の写真は世代を超えて親しまれてきた。累計販売数は14億冊を超え、業界内でも圧倒的なシェアを誇る。

 55周年を迎える同ブランドは、今年11月、長らく定番となっていた表紙が変わることに。これまでは写真家の故・山口進さんが撮影した生き生きとした昆虫や花々が表紙を飾ってきたが、イラストに変更されることとなる。

 8月28日~31日に開催された「東京おもちゃショー」では、ジャポニカ学習帳を製造、販売するショウワノートのブースに、新デザインの学習帳がずらりと並んでいた。

 学習帳の表紙をイラストに変更した狙いと今後の展開とは? ショウワノートの担当者に話を聞いた。

■『ジャポニカ学習帳』大幅リニューアルの背景は?

 ジャポニカ学習帳の表紙といえば、写真家の山口進さんによる昆虫や花のイメージが強いかもしれない。しかし、学習帳の表紙にイラストが採用されたこと自体は初めてではなく、山口進さんの特撮シリーズが始まる以前は、イラストを使用した物も多少存在したという。また、本の装丁も初期の深い色味から徐々に変化するなど、数年に一度の周期で細かなアップデートもされている。

 ただ、今回のような大幅リニューアルは初めての試み。理由の一つには、学習帳業界の変化もあったという。

「今の学習帳は、表紙にイラストをあしらうのが一つのトレンドでもあります。30年前はジャポニカ学習帳も含めて、どの企業も写真を使っていましたが、昨今の市場を見ると写真を表紙に採用していたのはジャポニカくらいです。市場の変遷を鑑みて、いつイラストに変更するべきか……というタイミングは探していました」

 とはいえ、市場の流れだけを見た単なるデザイン変更ではない。学習帳のメインユーザーである子どもたちを取り巻く環境が変化し、詰め込み教育から発想を育む教育へと移行する現代において、より子どもたちの想像を刺激できる表紙は何かを突き詰めた結果、イラストが採用された。

 そのうえで、今回のリニューアルで定めたテーマは“共生”だという。

「“共生”という考えは、山口進さんの生涯の撮影テーマでもありました。我々も創刊から55年間この思いを紡いできましたし、自然界の動植物が共生するように、多様な人々が調和して暮らすことの大切さを子どもたちに伝えたい。あるものをそのまま写し出す写真と違って、イラストには絵の中のストーリーがあり、そこに想像が生まれる。子どもたちの好奇心をいっそう刺激するデザインになっています」

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