“ゾルディック家との奇妙な関係”に“ヒソカの発言”…『HUNTER×HUNTER』幻影旅団にまつわる「未解明の謎」の画像
『HUNTER×HUNTER』幻影旅団編 DVD-BOXII(バップ) ©POT(冨樫義博)1998年-2011年 ©VAP・日本テレビ・集英社・マッドハウス

 1998年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載中の冨樫義博氏の名作バトル漫画『HUNTER×HUNTER』。

 本作において、物語全体を通じて強烈な存在感を放ってきたのが、盗賊集団「幻影旅団」である。団長のクロロ=ルシルフルを頭に、12人の団員を「蜘蛛の脚」に見立てた計13人で構成されるこの組織は、通称「旅団(クモ)」と呼ばれ、「ヨークシンシティ編」をはじめとする物語の節目で暗躍してきた。しかし、初登場から20年以上が経った今なお、その全貌は謎に包まれている。

 そこで今回は、未だ解き明かされていない幻影旅団をめぐる複数の謎を整理し、その背後に潜む可能性を考察していきたい。

 

※本記事には作品の内容を含みます

 

■敵か味方か? 旅団とゾルディック家との不思議な関係

 1つ目は、幻影旅団と暗殺一家・ゾルディック家との奇妙な関係である。

 「ヨークシンシティ編」では、ゾルディック家当主・シルバとその父・ゼノがマフィアの依頼を受け、クロロの抹殺に動いた。シルバは過去にも暗殺を請け負った経験があり、そのときは旅団員1名を仕留めている。両者のあいだには、少なからず因縁があると言えるだろう。

 ところが一方で、ヒソカ=モロウが旅団を脱退した後にはゾルディック家の末子・カルトが旅団に加入しており、さらには「王位継承編」では、長男・イルミまでもメンバー入りを果たしている。敵対関係にありながら、なぜ旅団は敵対していたはずのゾルディック家を受け入れたのだろうか。

 その大きな理由のひとつは、ゾルディック家が「依頼あっての暗殺者」である点だろう。実際、クロロとの戦闘中、依頼主である十老頭の死亡が確認されると、ゼノは「おぬしはもうターゲットではないのでな」と言い、即座に手を引いた。このようなゾルディック家の徹底したプロフェッショナルな特性が、大きく影響していると考えられる。

 クラピカのように私怨で追い続ける者や、ヒソカのように自ら快楽を求めて戦いを挑む者とは違い、ゾルディック家はあくまでビジネスとして依頼を遂行する。旅団にとっても、依頼がなければ無用に絡んでこない彼らと衝突する理由は薄い。むしろ、利害が一致すれば、協力すら可能かもしれない。

 これこそが、両者が不思議な共存関係を成り立たせている理由ではないだろうか。

■本当に旅団の仕業? クルタ族滅亡の謎

 旅団をめぐる最大の謎の一つが、クラピカの同胞であるクルタ族を滅亡させた事件の真相である。

 感情がたかぶると瞳が鮮やかな緋色に変わるクルタ族。その希少な「緋の目」を狙った旅団によって皆殺しにされた、というのが、作中で長らく語られてきた定説であった。クラピカが旅団を一族の仇とみなし、執念を燃やす理由もここにある。

 クルタ族の村で暮らす幼少期のクラピカの姿が描かれた「クラピカ追憶編」(0巻収録)では、ラストにクルタ族が命を奪われた現場に「我々は 何ものも拒まない だから 我々から 何も奪うな」という、流星街出身である旅団を思わせるようなメッセージが残されていたことも明かされていた。

 だが、この事件には不可解な点も多い。旅団は「欲しいものは奪う」盗賊集団である。だが、その一方、クロロをはじめ団員が金そのものに強い執着を見せる描写はほとんどない。

 ところがクルタ族の緋の目は、そのほとんどが売り払われ、金に代えられている。結果として得られたものが、旅団のイメージと微妙にズレているようにも思えるのだ。

 この疑念を一層深めるのが「王位継承編」で登場した、カキン帝国第4王子のツェリードニヒ=ホイコーロの存在だ。人体収集家である彼のコレクションには、おびただしい数の緋の目が並ぶばかりか、その中央には「0巻」に登場したクラピカの親友・パイロの頭部らしきものまで飾られていた。さらに、ツェリードニヒの守護霊獣の口の中にも、パイロの顔らしきものまで確認できる。

 もしそれが本当にパイロであるならば、宿主の深層心理を反映するとされる守護霊獣にまで影響を与えるほど、ツェリードニヒが彼に執着していることになる。そう考えるならば、クルタ族虐殺の背後にツェリードニヒが深く関与していた可能性が浮上する。

 旅団とクラピカの因縁。その宿敵関係に、さらにツェリードニヒという新たな敵が絡んでくることになるのだろうか。

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